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2003年3月5日更新

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気象ブックス012『富士山測候所物語』


著者・志崎大策
発行所・株式会社成山堂書店
初版・2002年9月8日
志崎大策(C)2002
ISBN 4-425-55111-7

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【本文より引用】
「気圧を測定することで富士山の高さを測ったのは有名なシーボルトである。彼は長崎のオランダ商館の医師として一八二三(文政六)年に来日したドイツ人で、長崎市内鳴滝に日本人のための診療所を設け、塾を開いて全国から集まってきた人達に西洋医学を教えた。シーボルトは来日以来、富士山の高さを測りたがっていた。」

「富士山への登山はシーボルト自身がやりたかっただろうが幕府の監視が厳しく不可能で、弟子の二宮敬作が極秘計画の実行に当たった。一八二七(文政一〇)年の春、二宮は第一回の登山を試みたが、気象条件が悪く途中で引き返した。その翌年の旧暦四月にようやく登頂に成功して、おそらく気圧の観測から山頂の高さを「三七九四.五メートル」と算出した。
富士山の標高は現在三七七六メートルであるから、その差は二〇メートル足らずで、幸運でもあったろうが、驚異的な誤差に留まっている。」

「富士山頂で最初に観測を行ったのは、一八八〇(明治一三)年である。東大教授メンデンホールほか東大学生一行は(中略)八月三日から六日まで富士山頂で、重力測定、気象観測、天体観測を実施した。(中略)沸点による気圧の観測が正確で、気温の観測とともに富士山の高さは三七七八メートルと計算された。」

(P1〜「第一章 富士山測候所前史」より)

富士山頂はじめての気象観測が試みられてから120年。常時観測がはじまってから70年。標高3776メートルの富士山測候所は、世界に誇る高山の観測所として日夜、日本の上空を観測している。直径5メートルの巨大アンテナを持つレーダーは、1964年から台風の砦として、はるか800キロ先までの雲をつぶさにとらえてきた。しかし、台風監視の役割が気象衛星ひまわりに移ったことから、レーダー観測は1999年に役目を終え、施設は地元の富士吉田市に引き取られた。来年には歴史民族博物館の中で一般公開されるという。
著者は、富士山測候所での年月が誰よりも長く、定年を迎えたのも富士山測候所長4年目のことであった。

この本には、雪と風と氷の山頂に半生をかけた著者の情熱があふれている。明治年代に早くも山頂の観測を目指して活動したた先覚の人々、勤務交代の登下山につきものの苛酷な気象と不幸な殉難、厳寒のもとでの観測の苦労から、新しくはレーダー観測開始までの舞台裏などなど、見逃せない話題が盛り沢山である。中でもレーダーは著者の十八番(おはこ)のジャンル、世界気象機構(WMO)の気象レーダー専門家としてカリブ海気象業務に参画した、折り紙付きの経歴を持つ。

富士山測候所の話題でこれだけ詳しく調べた例は数少ないのではないか。貴重な一冊である。 じっくりと目を通し、新たな思いで秀麗な富士の姿に見惚れたいものである。(気象予報士・森川達夫)

富士山で思い出すことと言えば、10年ほど前の夏、テレビ番組の企画で「富士山頂から一週間連続完全生中継」という無謀ともいえる試みをしたことがあります。
順調に中継が進んでいたある日のこと、「明日あたり、台風がくるなー」と話しかけられました。その方は、富士山を撮りつづけて25年というアマチュアカメラマンで、経験によって台風を予測できるというのです。詳しく聞いてみると「富士山頂から芦ノ湖が見えると必ず悪天となり、さらに伊豆半島の先端が見えれば、1〜2日後に必ず台風が来襲する」とのことで、早く山を下りたほうがいい、と教えてくれたのでした。
その日は素晴らしい快晴で、中継をあきらめきれない我々は、忠告を聞き入れずにスケジュールを強行しました。そして最終日、本当に台風が富士山を直撃。日も沈んで真っ暗な中を、風速48.3m/sという暴風に必死で抗いながら下山したことは、その後の自分の気象解説に大きく影響していると思います。
この本は、それほど厳しい富士山頂で生活しながら観測を続けている方々の、リアルな日常を描き出しています。(森田正光)


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