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2006年9月25日更新





ブルーバックス B-1414
『謎解き・海洋と大気の物理』
地球規模でおきる「流れ」のしくみ


著・保坂直紀
発行所・講談社
初版・2003年7月20日
(C)保坂直紀 2003, Printed in Japan
ISBN 4-06-257414-4
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【本文より引用】
「黒潮は海上の大河」P28〜
「黒潮の流れのもっとも速い部分は秒速二メートルぐらい。陸上の川の流れが、岸の近くでは遅くてまんなかで速いのとよく似ていて、黒潮の流れもまんなかあたりがもっとも速い。(中略)水深が数百メートルになると、流速は秒速五〇センチメートルほどに落ちる。さらに七〇〇メートルから八〇〇メートルぐらいまでもぐると、秒速一〇センチメートルぐらい。それより深いところでは,ほとんど水は動いていない。だから黒潮の深さは一〇〇〇メートル近いといってよいだろう。」

「『川の流れのように』ではなかった」P35〜
「海流やジェット気流は、地球スケールの大規模な流れに特有の現象なのだ。(中略)地球は二四時間で自ら一回転している。これを地球の「自転」というが、結論だけさきにいうと、この自転がなければ海流もジェット気流もうまれない。一報の川の流れは、地球が自転していようがいまいが、おかまいなくうまれる流れだ。」

「4-1 そもそもエルニーニョとはなにか」P142〜
「東太平洋の赤道沿いの海面水温が、例年にくらべて数度ぐらい高くなる現象のことだ。」

「4-2 エルニーニョがおよぼす影響」P161〜
「太平洋の赤道沿いでいうと、ふつうは西部の海水温が高く、東部は低いので、上昇気流は西部にあるインドネシアやフィリピンなどのあたりでおきる。(中略)エルニーニョが発生すると様相ががらりと変わる。(中略)雨も多いはずのインドネシアなどが、こんどは下降気流の場所になって雲ができにくくなる。」

「ラニーニャは台風がお好き」P170〜
「エルニーニョのときは台風の発生が少なく、反対にラニーニャのときは多くなる傾向が確かめられた。ラニーニャのときは、西太平洋の海面水温がふだんより高くなるので、そのぶん台風は発生しやすいらしい。ただ、日本にやってくる台風が増えるか減るかは、またべつの話。台風が流される上空の大規模な風がどのように吹いているかで、台風の進路はまったく変わってくるからだ。」


台風13号が猛烈な強風と竜巻により、九州地方に大きな爪痕を残した。

今年8月は、フィリッピンの東の海域は広い範囲にわたって海面水温が平年より低く、珍しいことにこの海域での台風の発生はなかった。ところが、9月に入って水温が上がり始めるやいなや、待ち構えていたように台風が発生した。それが13号である。非常に強い勢力を保ったまま北上して長崎県に上陸し日本海に抜けた。

また、今年の夏は北日本で涼しく、対照的に西日本では猛暑が続いた。その原因をさぐると、これもなんと、フィリッピン東方海域の低い水温のシワザであった。ここでの対流活動が弱くそのために夏の高気圧が北日本にまで張り出せなかったためである。

地球の気象を左右するおおもとは、地球表面の七割を占める海洋にあるということができよう。
では、海洋で水温の高いところと低いところがあるのはなぜか、どうして海流というものがあるのか、エルニーニョ現象がおこるのはなぜか、などなど、海洋には知りたいことがいっぱいある。

この本はそういった海洋と大気の謎をわかりやすく説き明かしている。
しかもこの本には、ほかには見られない特色がある。同じようなアイテムが二度三度繰り返し出てくることである。これが実にありがたい。うっかり読み飛ばしても、あとのページでさらにわかり易く書かれているのだから、なんのためらいもなくスイスイと読み進むことができ、しかも頭に入ってくる。
一つの例が、「西向きにだけ伝わる波」(P200〜)と題する「ロスビー波」の解説である。これほど解りにくいテーマをこれほど解りやすく書いた本は見たことがない(あとは見てのお楽しみ)。

B5版の小冊子ながら、コンテンツが溢れるばかり。一読をおすすめします。 
(気象予報士・森川達夫)

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