2010年7月14日更新
片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士)
【2009年の台風の特徴】

Ⅰ. 2年ぶりに台風上陸

Ⅱ. 台風18号、竜巻相次いで発生

Ⅲ. 発生数は少なく、猛烈な台風は多く

Ⅳ. 発生場所は「西多東少」


Ⅰ. 2年ぶりに台風上陸

2009年の台風シーズンは「前半不活発、後半やや活発」となった。7月までの発生数は6個で平年の7割程度と少なく、特に7月の発生数は平年の半分であった。その後、8月に5個、9月に7個と発生数は多くなったが、年間の発生数は22個に止まり、5年連続で平年を下回った。


10月8日5時過ぎ、台風18号が愛知県知多半島に上陸した。台風の上陸は2007年9月の台風9号以来2年ぶりのこと。

7日夕方には、九州南部の一部が暴風域に入り、南大東島では最大瞬間風速57.6メートル(南南東の風)を記録した。また、台風の活発な雨雲がかかった紀伊半島では時間雨量50ミリを超える非常に強い雨となった。

上陸時の勢力は中心気圧955ヘクトパスカル、最大風速は40メートルと強く、東海から関東の広い範囲で暴風となった。ちょうど、台風の接近が通勤通学の時間にあたった首都圏では、風速25メートルを超える暴風のため、JR各線が相次いで運転を見合わせた。駅の間に立ち往生する電車やホーム・駅に通勤客が溢れ、大混乱となった。


2009年10月8日9時の地上天気図と雲画像
→気象ダイアリー:2009年10月8日

Ⅱ. 台風18号、相次いで竜巻発生

台風18号に伴って、竜巻が相次いで発生した。4時半ごろ、千葉県九十九里町と山武市で強さF1の竜巻が発生。その20分後には茨城県龍ヶ崎市と利根町、5時には土浦市でも強さF1の竜巻が発生した。当時、水戸のウィンドプロファイラでは北東風と南風のシアーが明瞭で、下層の冷気塊と台風からの暖湿流が激しくぶつかったものと思われる。

発生場所 被害 幅 被害 長さ
千葉県九十九里町、山武市 20~30m 1.5km
茨城県龍ヶ崎市 100~200m 6.0km
茨城県土浦市 200~300m 2.8km

Ⅲ. 発生数は少なく、猛烈な台風は多く

2009年の台風の発生数は22個と2007年に続き平年の約8割にとどまった。発生数が平年を下回るのは5年連続のことで、経年変化をみると、1990年代後半から発生数の減少傾向が見られる。


一方で、カロリン諸島で発生した台風22号は今シーズン最強の905hPa(猛烈な強さ)まで発達した。気象庁太平洋台風センターによると、11月~12月に猛烈な勢力まで発達する台風は4年~5年に1個程度の割合だという。また、今シーズン、猛烈な台風となったのは22号を含めて4個と最近10年間では2006年に次いで多くなった。


台風の発生数は5年連続で少なくなったが、一方で猛烈な強さの台風は2006年以降増加している。単なる偶然なのか、それとも傾向が表れているのか、このデータでははっきりとしたことはいえない。ただ、温暖化と台風の関係でいえば、台風の発生数が減る一方で台風が巨大化しやすいと指摘されている。


◆参考文献

 2006年度秋季大会シンポジウム「台風-伊勢湾台風から50年を経て-」

 5.地球温暖化で台風はどうなるか 杉正人 天気27-32


Ⅳ. 発生場所は「西多東少」

上図に台風の発生場所を示した。台風が多く発生するのは北緯10度~20度の海域である。発生数は東経140度を境に、西側で多く東側で少ないことが明瞭に分かる。

・南シナ海:東経100度以上120度未満(緑)

・フィリピンの東:東経120度以上140度未満(青)

・マリアナ諸島:東経140度以上160度未満(赤)

マリアナ諸島周辺で発生する台風は昨年から少ない状態が続いていたが、今シーズンは秋になってようやく発生が見られた。

また、2009年は夏からエルニーニョ現象が発生したが、エルニーニョ年の特徴である「発生場所が南東側にずれる」は見られなかった。

発生数は東経140度を境に、西側で多く東側で少ないことが明瞭に分かる。特に、マリアナ諸島周辺の発生数はわずか1個と平均(5.0個)を大幅に下回った。一方、南シナ海では6個発生し、平均(3.4個)の約1.7倍となった。フィリピンの東では平均(8.0個)を下回る6個が発生した。