片山由紀子(ウェザーマップ・気象予報士) 資料提供:気象庁
3月15日、全国(沖縄・奄美を除く)のトップを切って、高知でさくらが開花した。平年より7日早い。さくら前線が高知からスタートしたのは2014年以来、4年ぶり。この日は全国的に晴天となり、沖縄から東北北部まで気温が20℃を超えた。
高知から2日後の17日は東京で平年より9日早く開花した。これは2013年と2002年に並ぶ、観測史上3番目に早い記録である。
2018年冬の気温は全国的に平年を下回り、寒冬となった。とくに西日本は1985/86年以来、32年ぶりに寒い冬だった。強い寒気の影響を受けたため、日本海側(北日本を除く)の降雪量は平年を上回り、西日本ではかなり多くなった。一方、3月は一転して、気温の高い日が多くなったため、西日本では平年と比べ1週間から10日程度早くなった。3月20日に開花した大阪は観測史上最も早かった。
さくらが早咲きとなった要因として、考えられることは2つ。ひとつは冬の寒さが厳しく、休眠打破がしっかり行われたこと。二つ目は3月になって気温が高くなったことで、花芽の成長が早まったことが挙げられる。さくらの開花には好都合な気象状況だったといえる。
4月になっても、さくら前線の北上スピードは衰えず、4月2日は長野で平年より11日早く開花した。これは観測史上最も早い。
そして、さくら前線は4月25日、北海道に上陸した。松前町の職員が松前城前にある「桜前線本道上陸標準木(ソメイヨシノ)」の開花を確認した。松前町では昭和57年から独自に開花発表をしていて、今年は平年より5日早かった。
4月26日には札幌で開花し、北海道では大型連休前に花見シーズンを迎えた。さくら前線は58日をかけて日本列島を北上し、5月12日に稚内と釧路に到達した。
2018年【冬】 平均気温 | ||
平均気温平年差(℃) | ||
---|---|---|
北日本 | -0.4 | 平年より低い |
東日本 | -0.7 | 平年より低い |
西日本 | -1.2 | 平年より低い |
2018年【春】 平均気温と日照時間 | ||||
平均気温平年差(℃) | 日照時間の平年比(%) | |||
---|---|---|---|---|
北日本 | +1.4 | 平年よりかなり高い | 101 | 平年並み |
東日本 | +2.0 | 平年よりかなり高い | 113 | 平年よりかなり多い |
西日本 | +1.4 | 平年よりかなり高い | 114 | 平年よりかなり多い |
3月19日、全国で最も早く高知で満開となった。これは1953年以降、日本歴代1位の記録である。連日の暖かさで、高知では開花から満開まで4日という、これまでで最も短くなった。
一方で、東京ではさくら開花後、雪が降った。さくら開花後の雪は2015年以来、3年ぶりのこと。強い寒の戻りがあったが、23日には満開となる。平年よりも10日早く、観測史上3番目に早かった。
2018年春は記録的な暖春となった。東日本は平年を2.0℃上回り、1946年以降で最も高くなった。また、西日本は1946年以降で2番目に、北日本は4番目に高かった。そして、全国的に高気圧に覆われる日が多く、日照時間も各地で平年を大幅に上回り、東日本は1946年以降で、3番目に多くなった。
好天と高温の影響で、前橋、水戸、松江、福島などでは観測史上最も早く満開となった。お花見シーズンの到来は北海道でも早く、大型連休前半となった。帯広は4月28日に、旭川は5月1日に、開花からわずか1日で満開発表があった。
今シーズン、全国(沖縄・奄美を除く)で最も早くさくらが満開となったのは3月19日、高知である。これは記録が残る1953年以降で最も早い。
温暖化の影響で、お花見シーズンは年々、早まっている。満開が早かった年を調べてみた。
日本歴代の記録としては2002年と2010年の3月21日がある。2002年春は記録的に春が暖かく、東日本では平年を1.2℃上回った。下記の表は現在もさくらの観測が行われている地点から求めたもの。一方、現在は観測されていないが、種子島には1973年3月20日に満開となった記録が残っている。
月日 | 年 | 観測地点名 |
---|---|---|
3月19日 | 2018 | 高知 |
3月21日 | 2002 | 東京 |
2010 | 高知 | |
3月22日 | 2013 | 福岡 熊本 宮崎 高知 横浜 東京 |
3月23日 | 1990 | 高知 横浜 |
2009 | 福岡 宮崎 |
西・東日本ではうめが開花した後に、さくらが開花するイメージがあるが、北日本ではちょっと様子が違う。今シーズンは青森と札幌で、うめとさくらが同じ日に開花した。うめ前線とさくら前線はどのようにして日本列島を北上するのだろうか?
以下の表は全国主要都市のうめとさくらの開花日をみたもの。
観測地点名 | うめ | さくら | 差 |
---|---|---|---|
札幌 | 4月26日 | 4月26日 | 0 |
青森 | 4月19日 | 4月19日 | 0 |
仙台 | 3月16日 | 3月30日 | 14 |
新潟 | 3月25日 | 4月3日 | 9 |
東京 | 1月19日 | 3月17日 | 57 |
名古屋 | 2月8日 | 3月19日 | 39 |
大阪 | 2月26日 | 3月20日 | 22 |
松江 | 1月4日 | 3月26日 | 81 |
広島 | 2月25日 | 3月22日 | 25 |
高知 | 2月1日 | 3月15日 | 42 |
福岡 | 2月11日 | 3月19日 | 36 |
鹿児島 | 1月23日 | 3月17日 | 53 |
2018年のうめ前線は年明けすぐの1月4日、那覇・松山・松江からスタートした。しばらくはうめ前線が先行していたが、3月になるとさくら前線がスタートし、その差を急速に縮めた。東北地方を北上する頃には、ほとんど差がなくなった。