2002年11月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域の11月の海面水温の基準値(1961〜1990年の平均値)との差は+1.5℃。5か月移動平均値は6か月連続して+0.5℃以上となり、1997年以来5年ぶりにエルニーニョ現象の定義を満たした。
◆11月の太平洋赤道域の海面水温は、はほぼ全域で平年より高く、東経175度から西経85度にかけて平年より+1℃以上高かった。とくに、西経160 度付近では+2℃以上の正偏差が見られた。
◆南方振動指数は-0.4。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、西経145 度から西経105度にかけての深度60mから140mで平年より4℃以上高かった。一方、東経170度以西の深度70mから190mでは-1℃以下の負偏差が見られた。太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度・時間断面図では、11月初めに西経175度から西経115度に分布していた+2℃以上の正偏差域が東進し、11月末には西経130度から西経90度にかけて見られた。一方、東経160度以西では11月を通じて+0.5℃以下の負偏差となっており、日付変更線付近を挟んだ東西のコントラストが明瞭になった。
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今後の見通し(2002年12月〜2003年6月) |
11月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値からの差は+1.5℃と10月の+1.1℃よりさらに増大した。5か月移動平均値は6か月連続して+0.5℃以上となり、5年ぶりにエルニーニョ現象の定義を満たした。また、南方振動指数は-0.4 と9か月連続して負の値となった。赤道に沿った表層水温や海面から深度260mまでの平均水温では、東部で正偏差が増大するとともに、西部では負偏差域が拡がり、日付変更線付近を挟んで東西のコントラストが明瞭になった。これらの状況は、エルニーニョ現象が成熟期に入ったことを示している。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温の基準値との差が予測期間を通じて11月と同程度の値が続くと予測している。
以上のことから、現在のエルニーニョ現象は少なくとも来春まで続くと予測される。
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2002年11月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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この秋の世界の天候とエルニーニョ現象との関連 |
●熱帯域では、東南アジアから太平洋赤道域、南アメリカにかけてエルニーニョ現象に伴う特徴的な大気の循環や対流活動の偏りが現れている。インド、オーストラリア、インドネシア、ブラジル北東部の少雨、ペルーの多雨は、エルニーニョ現象の影響を受けている可能性が高い。
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●中・高緯度域では、ユーラシア大陸の東部を中心とした亜熱帯ジェットの南下や北太平洋中部から北アメリカにかけて気圧の谷や尾根の分布のような、エルニーニョ現象に伴う特徴的な大気の循環が現れている。中国中部の少雨や中国南部の多雨、カナダ西部の少雨などは、エルニーニョ現象の影響を受けている可能性が高い。
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この秋の日本の天候とエルニーニョ現象との関連 |
●統計調査によるとエルニーニョ現象発生時の日本の秋の気温は「平年並〜低い」傾向がある。
●一方、この秋の気温は、前半は平年並〜高めだったが、後半は全国的に低温となり、秋の平均気温も全国的に低くなった。この秋の低温は過去のエルニーニョ現象発生時の特徴と同様であるが、10月下旬以降の全国的な低温は北極圏など高緯度側の寒気が中緯度に南下したことに
伴い、寒気が日本付近に南下したことが主な要因であると考えられる。
こうしたことから、この秋の日本の天候については、エルニーニョ現象の影響は小さい。
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(12月10日 気象庁発表) |
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