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2005年3月

●太平洋赤道域の対流活動は平年並だった。海面水温は中部で依然正偏差が見られたものの、東部ではほぼ平年並だった。海洋表層(海面から深度数百m までの領域)では、顕著な水温正偏差が中部から東部に移動した。。

●エルニーニョ監視海域の海面水温は、春は基準値(1961〜1990 年の30 年平均値)に近い値で推移し、その後基準値よりやや高い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低い。




2005年3月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い

2005年3月の状況

◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の2月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は+0.1℃。1 月の5 か月移動平均値は+0.4℃となり、5 か月ぶりに+0.5℃ を下回った。

◆南方振動指数は+0.2。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)

◆3月の太平洋赤道域の海面水温は、東経160 度から西経160 度にかけて平年より0.5℃以上高く、日付変更線付近では+1℃ 以上の正偏差が見られた。一方、西経90 度付近では平年より0.5℃以上低かった。

◆太平洋赤道域の海面水温は、中部の+0.5℃以上の正偏差域が3 月半ば以降やや拡大した。一方、東部の負偏差域はやや縮小した。

◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図では、3 月初めに日付変更線から西経130 度にかけて見られた+1℃以上の正偏差域は東に移動し、3 月末には西経150 度から西経110 度の領域で見られた。

◆太平洋の対流活動は、南緯10 度に沿った東経160 度から西経120 度付近で平年より不活発だったものの、赤道域では平年並だった。

◆赤道季節内振動に伴う対流活動の活発域がインド洋東部に進入したことに伴い、3 月半ば以降、太平洋赤道域の西部から中部の大気下層では東風偏差が卓越した。


今後の見通し(2005年4月〜2005年10月)

2月に太平洋赤道域の日付変更線付近で活発だった対流活動は、3月には平年並に戻った。海洋表層で顕著な水温正偏差が中部から東部に移動したことに伴い、東部の海面水温負偏差域はやや縮小した。3月の太平洋赤道域の海面水温は、中部の日付変更線付近を中心に依然正偏差が見られるものの、東部ではほぼ平年に近い状態にある。エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は+0.1℃となった。

太平洋赤道域の海洋表層を東進中の水温正偏差は、今後1〜2 か月のうちに東岸に到達し、東部に残る海面水温負偏差を正に転じさせる可能性が高い。しかし、現在、西部から中部にかけての大気下層では東風偏差が卓越している。これに対応して西部の表層水温は東経160 度付近で負偏差となり、今後東に移動して東部の海面水温偏差を一段と増大させ得る、新たな正偏差は認められない。したがって、東部の広い範囲で海面水温偏差が正に転じたとしても、その振幅がさらに増大する可能性は低い

エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温の基準値との差が今後増大し、夏以降、基準値より高い値で推移すると予測している。しかしながら、予測モデルはここ数か月海面水温を実際より高めに予測する傾向があるので、春以降、基準値との差が増加するものの、その増加の程度はモデルの予測を下回ると考えられる。

以上のことから、監視海域の海面水温は春に基準値に近い値をとり、その後基準値よりやや高い値で推移するとみられ、予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低いと判断される。ただし、東部太平洋赤道域では季節的に春は海面水温が高く大気との相互作用が起きやすいので、大気・海洋の状況を引き続き監視していく。





エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1994年1月〜2005年3月)

太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。


2004年 2005年
エルニーニョ監視指数 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
基準値との差(℃) +0.2 0.0 +0.1 +0.2 +0.4 +0.3 +0.5 +0.9 +0.7 +0.4 -0.1 +0.1
5か月移動平均(℃) +0.2 +0.1 +0.2 +0.2 +0.3 +0.5 +0.6 +0.6 +0.5 +0.4

南方振動指数 -1.4 +1.2 -1.1 -0.6 -0.5 -0.2 -0.2 -0.7 -0.7 +0.3 -2.2 +0.2

2月
4月

資料提供:気象庁
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