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2005年2月

●太平洋赤道域の日付変更線付近で対流活動が活発化したことに伴い、大気下層の西部で西風偏差、東部で東風偏差が卓越した。その結果、海面水温は正偏差域が縮小し、東部を中心に負偏差域が拡がった。海洋表層(海面から深度数百m までの領域)水温では、中部で顕著な正偏差、東部で負偏差が見られた。

●エルニーニョ監視海域の海面水温は、春は基準値(1961〜1990 年の30 年平均値)に近い値で推移し、その後基準値よりやや高い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低い。




2005年2月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い

2005年2月の状況

◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の2月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は-0.1℃

◆南方振動指数は-2.2。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)−2 を下回ったのは1998 年3 月以来。

◆2 月の太平洋赤道域の海面水温は、東経160 度から西経160 度にかけて平年より0.5℃ 以上高かった。一方、東経130 度から東経145 度にかけてと西経130 度以東では平年より低く、西経90 度以東では−1℃以下の負偏差が見られた。

◆太平洋赤道域の海面水温は、1 月にほぼ全域で見られた正偏差域が2 月に入って縮小した。東部では負偏差域が次第に拡がり、2 月末には西経120 度以東が−0.5℃ 以下の負偏差で占められた。

◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図では、1 月下旬に東経160 度付近に現れた+1℃ 以上の正偏差域は東に拡がり、2 月末には東経175度から西経140 度にかけて見られた。また、2 月半ばには西経170 度付近に+2℃以上の正偏差が出現した。一方、2 月を通じて西経120 度以東では−0.5℃ 以下の負偏差が卓越した。

◆太平洋の対流活動は、赤道域の日付変更線付近から南東方向にかけて平年より活発だった。一方、フィリピン付近からオーストラリアにかけては不活発だった。

◆日付変更線付近の対流活動が活発化したことに伴い、太平洋赤道域の下層では西部で西風偏差が、東部で東風偏差が卓越した。


今後の見通し(2005年3月〜2005年9月)

太平洋赤道域の大気は、2 月を通じて日付変更線付近を中心に対流活動が活発で、その東側の大気下層では東風偏差が卓越した。その結果、1 月に太平洋赤道域のほぼ全域を占めていた海面水温の正偏差域が縮小し、東部で負偏差域が拡がった。2 月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は−0.1℃ となった。表層水温においても、東部を中心に負偏差が卓越した。したがって、2004 年秋以降続いてきた東部の海面水温が平年よりやや高い状態は、ほぼ解消した。

一方、対流活動の活発域西側の大気下層で卓越した西風偏差に対応して、中部の海洋表層では水温の正偏差が出現し、東進しつつある。今後4 月から5 月にかけて、この正偏差が東部に到達し、東部の海面水温偏差を再び正に転じさせる可能性が高い。しかし、現在、東部の表層水温では負偏差が卓越していることに加え、海面水温分布を反映して東部では東風偏差が当面維持されるとみられることから、東進してきた表層水温の正偏差は弱まると考えられる。したがって、東部の海面水温偏差が正に転じたとしても、その振幅が一気に増大する可能性は低い。

エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温の基準値との差が今後増大し、夏には基準値より高い値で推移すると予測している。しかしながら、予測モデルはここ数か月海面水温を実際よりも高めに予測する傾向があるので、春以降に基準値との差が増加するものの、その増加の程度はモデルの予測を下回ると考えられる。

以上のことから、監視海域の海面水温は春に基準値に近い値をとり、その後基準値よりやや高い値で推移するとみられ、予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低いと判断される。ただし、東部太平洋赤道域では季節的に春は海面水温が高く大気との相互作用が起きやすいので、大気・海洋の状況を引き続き注意深く監視していく。





エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1994年1月〜2005年2月)

太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。


2004年 2005年
エルニーニョ監視指数 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月
基準値との差(℃) +0.3 +0.2 0.0 +0.1 +0.2 +0.4 +0.3 +0.5 +0.9 +0.7 +0.4 -0.1
5か月移動平均(℃) +0.3 +0.2 +0.1 +0.2 +0.2 +0.3 +0.5 +0.6 +0.6 +0.5

南方振動指数 +0.1 -1.4 +1.2 -1.1 -0.6 -0.5 -0.2 -0.2 -0.7 -0.7 +0.3 -2.2

1月
3月

資料提供:気象庁
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