●太平洋赤道域の海面水温はほぼ全域で正偏差が見られた。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)では、顕著な水温の正偏差や負偏差の東進は見られなかった。対流活動はほぼ平年並だった。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、夏から秋にかけて基準値(1961〜1990 年の30年平均値)に近づき、その後はほぼ基準値に近い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低い。
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2005年6月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2005年6月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の6月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は+0.5℃だった。
◆南方振動指数は+0.4(速報値)。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆6月の太平洋赤道域の海面水温は、ほぼ全域で平年より高く、
東経160度から西経175度にかけてと西経165度から西経150度及び西経115度付近で
平年より0.5℃以上高かった。
◆太平洋赤道域の東経160度から西経175度にかけてと西経165度から西経150度で
海面水温が平年より0.5℃ 以上高い状態は、4 月から変化していない。
4月下旬から5月上旬にかけて西 経100度付近に見られた+1℃以上の正偏差は減少し、
5月下旬から6月上旬にかけては平年並となった。
西経90度付近では6月中旬に一時的に−0.5℃以下の負偏差となった。
6月下旬には西経125 度、西経115度及び西経90 度付近で+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの
平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、4月から5月にかけて中部から東部を東進した
−0.5℃前後の負偏差は、5月末に南米沿 岸に達した。
4月中旬に東経160度付近に現れた+0.5℃以上の正偏差は5月中旬に日付変更線付近で消失した。
5月末に東経160 度以西に現れた+0.5℃以上の正偏差は、
6月中旬には日付 変更線付近まで達したが、その後見られなくなった。
6月下旬には全域で±0.5℃を超える偏差は見られなくなった。
◆6月は赤道季節内振動が不明瞭だった。大気下層の東経130度から西経170度では月を通して
1.5m/s 以上の東風偏差が見られた。一方、6月下旬には西経120度から西経80度にかけて
西風偏差が見られた。
◆6月の太平洋赤道域の対流活動は、西部でやや不活発だったことを除き、ほぼ平年並だった。
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今後の見通し(2005年7月〜2006年1月) |
6月の太平洋赤道域の海面水温は、ほぼ全域で平年より高く、
エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は+0.5℃だった。
一方、海洋表層では顕著な水温の正偏差や負偏差の東進は見られなかった。
また、6月の太平洋赤道域の対流活動はほぼ平年並で、
赤 道季節内振動も不明瞭だった。
東経130度から西経170度の大気下層では月を通じて東風偏 差であった。
このように現時点で、太平洋赤道域の大気および海洋において
顕著な海面水温の偏差を生じさせる要因は認められない。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温が夏から秋にかけて基準値に近づき、
その後はほぼ基準値に近い値で推移すると予測している。
以上のことから、監視海域の海面水温は、夏から秋にかけて基準値に近づき、
その後はほぼ基準値に近い値で推移するとみられ、
予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低いと判断される。
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1995年1月〜2005年6月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |