●太平洋赤道域の海面水温は、中部で正偏差が続いたが、東部では負偏差が拡がった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)では、東部で水温の負偏差が卓越した。大気下層では9月前半に東風偏差が見られた。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、秋から冬にかけてほぼ基準値(1961〜1990年の30年平均値)に近い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生する可能性は低い。
|

2005年9月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
|
|
2005年9月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の9月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は−0.2℃となり、2005年2月以来の負の値となった。
◆南方振動指数は+0.3(速報値)だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆9月の太平洋赤道域の海面水温は、東経160度から東経175度にかけて平年より0.5℃以上高かった。 一方、西経110度から西経90度にかけては平年より0.5℃以上低く、西経100度付近では−1℃以下の負偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度−時間断面図によると、東経160 度から日付
変更線にかけて+0.5℃以上の正偏差が継続して見られた。
一方、西経100度付近では9月に入って−1℃以下の負偏差が拡がった。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260m までの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によ
ると、−0.5℃以下の負偏差が9 月上旬には西経120 度から西経100 度付近に、9 月中旬以降は
西経170 度以東の広い範囲で見られた。
一方、9 月初めに東経140度付近に現れた+0.5℃以上の正偏差域は東に拡がり、9 月末にはその東端が日付変更線付近に達した。7月以降、日付変更線付近を境に西で正偏差、東で負偏差が継続して見られたものの、±1℃を超える偏差域は小さかった。
◆9月の太平洋赤道域の対流活動は、東経155度付近で平年より活発だった
◆9月の中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で平年並、下層で東風偏差を示していた。
◆9月の大気下層では、赤道季節内振動の通過に対応して、月の前半に東経150度から西経170度付近を中心に太平洋赤道域のほぼ全域で東風偏差が卓越したが、月の後半には東経150度から日付変更線付近を中心に西風偏差となった
|
|
|
今後の見通し(2005年10月〜2006年4月) |
9 月の太平洋赤道域の海面水温は、中部で正偏差が続いたが、東部では負偏差が拡がった。
9月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は、8月の+0.5℃から−0.2℃に減少した。海洋表層においても、東部で水温の負偏差が卓越した。
このような海洋の変化は、9 月前半に太平洋赤道域ほぼ全域の大気下層で東風偏差になったために
生じたと考えられる。しかし、その東風偏差は下旬には西風偏差に転じた。
また、太平洋赤道域の表層水温には、東部で負偏差域の、西部で正偏差域の東進が認められるものの、それらの偏差の大きさは小さく、今後監視海域の海面水温の基準値との差を大きく変化させるには至らないと考えられる。
このように、現在の太平洋赤道域では大気・海洋とも平年に近い状況にあり、直ちにエルニーニョ現象あるいはラニーニャ現象に向かう兆候は見られない。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温が秋から冬にかけてほぼ基準値に近い値で推移す
ると予測している。
以上のことから、監視海域の海面水温は秋から冬にかけてほぼ基準値に近い値で推移するとみられ、
予測期間中にエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生する可能性は低いと判断される。
|
|
|

|

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1995年1月〜2005年9月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
|
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |