●太平洋赤道域の海面水温は、ほぼ全域で正偏差が見られたが、東部の海洋表層(海面から深度
数百m までの領域)では水温の負偏差が卓越していた。対流活動はほぼ全域で平年並だった。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、秋に基準値(1961〜1990 年の30 年平均値)に近づき、
その後はほぼ基準値に近い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低い。
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2005年8月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2005年8月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の8月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は+0.5℃だった。
◆南方振動指数は -0.5(速報値)。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆8 月の太平洋赤道域の海面水温は、西経165 度から西経150 度にかけてと南米沿岸で負偏差
だったことを除き、ほぼ全域で正偏差であった。
東経160 度から東経175 度にかけてと西経130度及び西経120 度付近では平年より0.5℃ 以上高かった。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度−時間断面図によると、東経160 度から日付
変更線にかけて+0.5℃ 以上の正偏差が継続して見られた。
一方、西経160 度から西経140 度にかけては7 月まで+0.5℃ 以上の正偏差が続いていたが、8 月に入り負偏差に転じた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260m までの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によ
ると、8 月上旬に西経160 度から西経100 度では−0.5℃以下の負偏差が見られ、特に西経140
度付近では平年より1℃以上低かったが、8 月下旬には−1℃ 以下の負偏差は消失し、−0.5℃
以下の負偏差域も西経120 度から西経110 度に縮小した。
一方、8 月の初めに東経140 度から東経160 度に見られた+0.5℃ 以上の正偏差域は下旬には東経160 度から西経160 度に広がった。
◆8 月の太平洋赤道域の対流活動は、ほぼ全域で平年並だった。
◆8 月の中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で東風偏差、下層で平年並を示していた。
◆8 月の大気下層では、月初めには太平洋全域で東風偏差であったが、8 月中旬に一時的に日付
変更線以東で西風偏差が卓越し、月末には再び東風偏差となった。
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今後の見通し(2005年9月〜2006年3月) |
太平洋赤道域の海面水温は、ほぼ全域で平年より高かった。8 月のエルニーニョ監視海域の
海面水温の基準値との差は+0.5℃となり、4 月以降ほぼ同じ値で推移している。
しかし、東部赤道域の水温正偏差は海面付近に限られ、海洋表層ではむしろ負偏差が卓越していた。また、8 月に入って中部太平洋の一部では海面水温偏差が負に転じた。
太平洋赤道域の8月の対流活動はほぼ平年の状態に近く、中部では下層の風も平年並だった。日付変更線以東では8 月中旬に一時的に西風偏差となったが、下旬には太平洋赤道域のほぼ全域で東風偏差となった。
このように、、現在までの太平洋赤道域の大気および海洋表層の状況からは、東部の海面水温正偏差をさらに強める要因は見られない。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温が秋に基準値に近づき、その後はほぼ基準値に近い値で推移すると予測している。
以上のことから、監視海域の海面水温は、秋に基準値に近づき、その後はほぼ基準値に近い値で推移するとみられ、予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低いと判断される。
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1995年1月〜2005年8月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |