●太平洋赤道域の海面水温は、中部から東部の広い範囲で平年より低かった。海洋表層(海面から深度数百m までの領域)の水温は、東部で負偏差、西部で正偏差が明瞭だった。大気下層では中・西部で東風偏差が卓越した。
●現在の太平洋赤道域の中・東部で海面水温が平年より低い状態は、ラニーニャ現象である可能性が高い。この状態は春まで続くとみられる。
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2006年1月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2006年1月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の1月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は−0.9℃だった。
◆南方振動指数は+1.2だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆1 月の太平洋赤道域の海面水温は、日付変更線から西経115 度にかけて平年より0.5℃以上低く、西経170 度、西経140 度及び西経125 度付近では−1℃以下の負偏差が見られた。一方、東経145 度から東経160 度では平年より0.5℃以上高かった。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度−時間断面図によると、12 月末に西経175 度から西経90 度にかけて見られた−0.5℃以下の負偏差は、1 月末には東経175 度から西経115 度にかけて見られた。
◆1月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百m までの領域)水温は、西経170 度以東、深度150m 以浅の広い範囲で平年より1℃以上低く、西経150 度から西経80 度にかけての深度150m から50m では−2℃以下の負偏差が見られた。一方、東経170 度以西の深度50m から200m では平年より1℃以上高かった。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260m までの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、1 月を通じて東経170 度以西で+1℃以上の正偏差、西経160 度から西経120 度付近では−1℃以下の負偏差が見られ、東西のコントラストは12 月よりも明瞭になった。
◆1月の太平洋熱帯域の対流活動は、東経160 度以西で平年より活発で、とくにオーストラリア北西部で強い対流活動が見られた。また、南緯20 度・西経175 度付近で平年より活発、赤道域の日付変更線付近では平年より不活発だった。
◆1月の中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で西風偏差、下層で東風偏差を示していた。
◆1月の大気下層では、赤道季節内振動に伴う対流活発域が太平洋を通過したことに対応して、中旬以降中部で東風偏差が顕著だった。東経170 度を中心とした中・西部では、10 月以降、東風偏差が持続している。
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今後の見通し(2006年2月〜2006年8月) |
1 月の太平洋赤道域の海面水温は、12 月に引続き中部から東部の広い範囲で平年より低かった。1 月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は−0.6℃で、11 月の5 か月移動平均値は−0.5℃だった。海洋表層の水温は、東部で負偏差、西部で正偏差となり、東西のコントラストが明瞭だった。
対流活動は東経160 度以西で平年より活発、日付変更線付近で平年より不活発で、大気下層では中・西部で東風偏差が卓越した
このように、現在の太平洋赤道域の大気と海洋の状況は、ラニーニャ現象時の特徴を呈している。
また、大気と海洋が双方の偏差を相互に強めあう状態にあることから、中・東部における海面水温の負偏差傾向は当面持続すると考えられる。
一方、海洋表層では西部で暖水の蓄積が認められるものの、暖水の東方への拡大など、東部の海面水温偏差を今後大きく正に転じさせる要因は見られない。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温が、春にかけて基準値に近づき、夏は基準値よりやや高い値で推移すると予測している
しかしながら、最新の実況を重視すると、モデルの予測よりも若干低めに推移し、東部で海面水温が平年より低い状態は春まで持続すると考えられる。
以上のことから、現在の太平洋赤道域の中・東部で海面水温が平年より低い状態は、ラニーニャ現象である可能性が高く、この状態は春まで続くとみられる。
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1995年2月〜2006年1月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |