● 太平洋赤道域の海面水温は、中部から東部にかけて平年より低かった。海洋表層 海面から深度数百m までの領域)の水温は、東部で負偏差、西部で正偏差が明瞭だった。太平洋赤道域の大気下層では東風偏差だった。
●現在の太平洋赤道域の中・東部で海面水温が平年より低い状態は、ラニーニャ現象である可能性が高く、この状態は春まで続くとみられる。夏は基準値に近い値で推移するとみられる。
|

2006年2月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
|
|
2006年2月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の2月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は−0.4℃だった。
◆南方振動指数は+0.1だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆2月の太平洋赤道域の海面水温は、東経165度から西経120度にかけて平年より0.5℃以上低く、
東経175度から西経160度及び西経150度から西経130度にかけて-1℃以下の負偏差が見られた。
一方、東経135度から東経155度及び西経85度以東では平年より0.5℃以上高かった。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度−時間断面図によると、1月末に東経170 度から西経115 度にかけて見られた−0.5℃以下の負偏差は、2月中旬には東経165 度から西経125 度にかけて、2月末には東経165度から西経110度にかけて見られた。一方、2月中旬には、西経105度以東で+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆2月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百m までの領域)水温は、東経170 度以東、深度160m 以浅の広い範囲で平年より1℃以上低く、西経150 度から西経80 度にかけての深度130m から20m では−2℃以下の負偏差が見られた。一方、西経175 度以西の深度40m から250m では平年より1℃以上高かった。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、2月を通じて東経170度以西で+1℃以上の正偏差が見られた。また、1 月末に西経170度から西経110度に見られた-1℃以下の負偏差は、2月末には西経130度から西経 95度にかけて見られた。
◆2月の中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で平年並、下層で東風偏差を示していた。
◆2月の大気下層では、上旬に西経120度以東で西風偏差が現れた。1月中旬から続いていた日付変更線付近の顕著な東風偏差は、2月中旬には弱まった。その後、下旬には、ほぼ全域で東風偏差となった。
|
|
|
今後の見通し(2006年3月〜2006年9月) |
2月の太平洋赤道域の海面水温は、1月に引き続き中部から東部にかけて平年より低かったが、南米沖では正偏差となった。2月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は -0.4℃だった。海面水温の基準値との差の5か月移動平均値は、2005年の10月から12月にかけて -0.5℃以下だった。
海洋表層の水温は、東部で負偏差、西部で正偏差が持続し、1月に引続き東西のコントラストが明瞭だった。太平洋赤道域の大気下層では、上旬に東部で西風偏差が現れ、中旬に中部の東風偏差が弱まったが、下旬には、ほぼ全域で東風偏差となった。
現在の太平洋赤道域の大気と海洋の状況は、1月より弱いながらも引き続きラニーニャ現象時の特徴を呈している。海洋表層においても西部に蓄積された暖水の東方への移動は見られず、現時点では東部の海面水温偏差を今後大きく正に転じさせる要因は見られない。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温が、春にかけて基準値に近づき、夏は基準値付近からやや高い値で推移すると予測している。
以上のことから、現在の太平洋赤道域の中・東部で海面水温が平年より低い状態は、ラニーニャ現象である可能性が高く、この状態は春まで続くとみられる。夏は基準値に近い値で推移するとみられる。
|
|
|

|
エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
|

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1996年1月〜2006年2月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
|
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |