●太平洋赤道域の海面水温は、東部で顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られた。中部太平洋赤道域の東西風は、上層で西風偏差、下層で東風偏差だった。これらの状態は、ラニーニャ現象時の特徴を示している。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、予測期間中、基準値より低い値で推移すると予測される。
ラニーニャ現象は冬まで続く可能性が高い。
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2007年8月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2007年8月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の8月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-1.1℃だった。
◆南方振動指数は+0.4だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆8月の太平洋赤道域の海面水温は、西経140度から西経85度にかけて平年より0.5℃以上低く、西経135度から西経90度では平年より1℃以上低かった。一方、東経145度から東経170度にかけて+0.5℃以上の正偏差が見られた
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、7月末に西経140度から西経85度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は、8月下旬には西経155度から西経85度にかけて見られた。また、7月下旬に西経110度付近に現われた-2℃以下の負偏差は、 8月を通じて見られた。一方、7月末に東経160度付近に見られた+0.5℃以上の正偏差は、8月下旬には東経145度から東経170度にかけて見られた。また、8月下旬には東経155度付近に+1℃以上の正偏差が見られた。
◆インド 洋赤道域の海面水温は、東経75度以西で平年より0.5℃以上高かった。
◆8月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、西経165度から西経80度にかけての海面から深度170mで平年より1℃以上低かった。西経145度から西経95度にかけての海面から130mでは-2℃以下の負偏差が見られた。一方、東経140度から東経160度にかけての深度60mから180mでは+1℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、7月末に西経135度から西経100度にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、8月上旬には西経160度から西経100度にかけて見られ、8月下旬には西経150度から西経100度にかけて見られた。一方、7月末に東経155度以西で見られた+0.5℃以上の正偏差は、8月下旬には東経175度以西で見られた。
◆8月の太平洋赤道域の対流活動は、東経120度から東経135度にかけて活発、東経145度から西経175度にかけて不活発だった。
◆8月の日付変更線付近のOLR指数は対流不活発を示し、中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層では西風偏差、下層では東風偏差を示していた。
◆赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、8月上旬にインドネシア付近に見られたが、その後不明瞭となり、8月下旬にアフリカ大陸からインド洋にかけて対流活発な位相が再び見られた。中部太平洋赤道域の大気下層では、8月を通じて東風偏差が見られた。
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今後の見通し(2007年9月〜2008年3月) |
8月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-1.1℃だった。6月の5か月移動平均値は-0.7℃だった。
8月の太平洋赤道域の海面水温は、東部で顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だっ た。
海洋表層の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られ、西部では顕著な正偏差が見られた。
8月の太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は不活発、中部太平洋赤道域の東西風は上層で西風偏差、下層で東風偏差だった。
海洋と大気のこれらの状態は、ラニーニャ現象時の特徴を示している。
8月上旬に表層水温の負偏差が中部に現われ、その後大気下層の東風偏差により強まりながら東進した。こうした状況から、東部の海面水温の負偏差が維持しやすい状態は、今後しばらく続くと考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、予測期間中、基準値より低い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、予測期間中、基準値より低い値で推移すると予測される。ラニーニャ現象は冬まで続く可能性が高い。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1997年1月〜2007年8月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |