●太平洋赤道域の海面水温は、中部から東部にかけて顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だった。 海洋表層( 海面から深度数百 までの領域)の水温では 、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られた。中部太平洋赤道域の東西風は、上層で西風偏差、下層で東風偏差が顕著だった。これらの状態は、ラニーニャ現象時の特徴を示している。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、冬の間、基準値より低い値で推移し 、春には次第に基準値に近づくと予測される。
ラニーニャ現象は2008年の春まで続く可能性が高い。
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2007年10月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2007年10月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の10月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-1.5℃だった。
◆南方振動指数は+0.7だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆10月の太平洋赤道域の海面水温は、東経170度以東で平年より0.5℃以上低く、西経140度から西経115度では平年より2℃以上低かった。一方、東経140度から東経160度にかけて+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、9月末に東経170度から西経90度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は、10月下旬には東経170度から西経110度にかけて見られた。また、9月末に西経130度から西経100度にかけて見られた-2℃以下の負偏差は、10月下旬には西経140度から西経120度にかけて見られた。一方、9月末に東経150度付近に見られた+0.5℃以上の正偏差は、10月中持続した。
◆10月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経175 度から西経80 度にかけての海面から深度180mで平年より1℃ 以上低かった。西経140度から西経100度にかけての深度40mから120mでは-4℃以下の負偏差が見られた。一方、東経140度から日付変更線にかけての深度40m から190mでは+1℃以上の正偏差が見られた
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、9月末に西経170度から西経95度にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、10月下旬には西経155度から西経85度にかけて見られた。9月末に西経150度から西経115度にかけて見られた-2℃以下の負偏差は、10月下旬には西経130度から西経110度にかけて見られた。一方、9月末に東経150度付近に見られた+1℃以上の正偏差は、10月下旬には東経155度以西で見られた。
◆10月の太平洋赤道域の対流活動は、東経155度から日付変更線付近で不活発だった。
◆10月の日付変更線付近のOLR指数は対流不活発を示し、中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で西風偏差、下層で東風偏差を示していた。
◆赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、10月上旬から中旬にかけては南米から大西洋で見られ、10月中旬から下旬にかけてはインド洋で見られた。中部太平洋赤道域の大気下層で9月を通じて見られた顕著な東風偏差は10月上旬に一旦弱まり、中旬以降に西部から中部にかけて再び顕著な東風偏差が見られた。一方、東部では10月上旬から中旬にかけて西風偏差が見られた。
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今後の見通し(2007年11月〜2008年5月) |
10月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-1.5℃だった。8月の5か月移動平均値は-1.1℃だった。
10月の太平洋赤道域の海面水温は、、中部から東部にかけて顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だった。
海洋表層の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差が見られた。
10月の太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は不活発、中部太平洋赤道域の東西風は上層で西風偏差、下層で東風偏差だった。
9月に引き続きラニーニャ現象時の特徴が明瞭に見られることから、大気と海洋の相互作用により、当面こうした状態が維持されると考えられる。
このような状態では、海洋と大気が相互に影響し合い、東部の海面水温の負偏差を維持する傾向がある。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、冬の間は基準値より低い値で推移し、その後次第に基準値に近づくと予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、冬の間、基準値より低い値で推移し、春には次第に基準値に近づくと予測される。ラニーニャ現象は2008年の春まで続く可能性が高い。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1997年1月〜2007年10月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |