●太平洋赤道域の海面水温は、中部から東部にかけて顕著な負偏差だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られた。中部太平洋赤道域の東西風は、上層で西風偏差、下層で東風偏差が顕著だった。これらの状態は、ラニーニャ現象が持続していることを示している。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後、春の初めにかけては基準値より低い値で推移し、その後、次第に基準値に近づくと予測される。ラニーニャ現象は少なくとも春まで続く可能性が高い。
|

2007年12月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
|
|
2007年12月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の12月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-1.7℃だった。
◆南方振動指数は+1.6だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆12月の太平洋赤道域の海面水温は、東経165度以東で平年より0.5℃以上低く、西経145度から西経115度では平年より2℃以上低かった。一方、東経130度から東経145度にかけて+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、11月末に東経160度以東で見られた-0.5℃以下の負偏差は、12月中、東経165度付近以東で見られた。また、11月末に西経150度から西経135度にかけて見られた-2℃以下の負偏差は、12月下旬には西経145度から西経130度にかけて見られた。一方、12月中旬以降、東経140度から東経150度にかけて+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆12月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経165 度から西経80 度にかけての海面から深度190mで平年より1℃ 以上低かった。西経135度から西経95度にかけての深度40mから110mでは-4℃以下の負偏差が見られた。一方、東経140度から西経165度にかけての深度50m から220mでは+1℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、11月末に西経170度以東で見られた-1℃以下の負偏差は、12月下旬には西経160度以東で見られた。11月末に東経145度から東経170度にかけて見られた+1℃以上の正偏差は、12月中旬に弱まった。また、12月中旬から下旬にかけて+1℃以上の正偏差が東経140度から東経160度にかけて見られた。
◆12月の太平洋赤道域の対流活動は、東経140度から西経160度にかけて平年より不活発だった。
◆12月の日付変更線付近のOLR指数は対流不活発を示し、中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で西風偏差、下層で東風偏差を示していた。
◆赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、12月上旬に大西洋からインド洋へ東進し、中旬から下旬にはインド洋からインドネシア付近にかけて見られた。赤道季節内振動の位相に対応して、太平洋赤道域の西部から中部にかけての大気下層では12月中旬から下旬に顕著な東風偏差が見られた。
|
|
|
今後の見通し(2008年1月〜2008年7月) |
12月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-1.7℃だった。10月の5か月移動平均値は-1.4℃だった。
12月の太平洋赤道域の海面水温は、中部から東部にかけて顕著な負偏差だった。
海洋表層の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差が見られた。
12月の太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は不活発、中部太平洋赤道域の東西風は上層で西風偏差、下層で東風偏差だった。
これらの状態は、ラニーニャ現象が持続していることを示している。
11月から12月の中旬にかけて西部太平洋赤道域で暖水の東進が見られたが、中部の大気下層で東風偏差が持続したため、中部の海面水温への影響は小さかった。引き続きラニーニャ現象時の特徴が明瞭であることから、大気と海洋の相互作用により、当面、東部の海面水温が平年より低い状態は維持されると考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、今後、春の初めにかけては基準値より低い値で推移し、その後次第に基準値に近づくと予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後、春の初めにかけては基準値より低い値で推移し、その後、次第に基準値に近づくと予測される。ラニーニャ現象は少なくとも春まで続く可能性が高い。
|
|
|

|
エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
|

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1997年1月〜2007年12月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
|
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |