●太平洋赤道域の海面水温は、中部で顕著な負偏差だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られた。中部太平洋赤道域の東西風は上層で西風偏差、下層で東風偏差だった。これらの状態は、ラニーニャ現象が持続していることを示している。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後、夏にかけて次第に基準値に近づくと予測される。ラニーニャ現象は夏にかけて次第に弱まっていくと見込まれ、夏の初めまで持続する可能性が高い。
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2008年1月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2008年1月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の1月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-1.5℃だった。
◆南方振動指数は+1.4だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆1月の太平洋赤道域の海面水温は、東経160度から西経90度にかけて平年より0.5℃以上低く、東経175度から西経125度では平年より2℃ 以上低かった。一方、東経135度付近では+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、2007年9月以降、東経170度付近以東で見られた-0.5℃以下の負偏差は、1月を通じて東経160度以東で見られた。また、12月末に西経145度から西経130度にかけて見られた-2℃以下の負偏差は、1月下旬には日付変更線から西経120度にかけて見られた。一方、12月下旬に東経140度付近に見られた+0.5℃以上の正偏差は1月中旬以降消失した。
◆1月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経160度から西経80 度にかけての海面から深度220mで平年より1℃ 以上低かった。西経145度から西経110度にかけての深度70mから130mでは-4℃以下の負偏差が見られた。一方、東経140度から西経175度にかけての深度40m から280mでは+1℃以上の正偏差が見られ、東経155度の深度130m付近では+4℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、12月末に日付変更線以東で見られた-1℃以下の負偏差は、1月下旬には西経160度以東で見られた。12月末に東経160度以西で見られた+1℃以上の正偏差は東に拡がり、1月下旬には日付変更線以西に見られた。
◆1月の太平洋赤道域の対流活動は、東経135度から東経150度にかけて平年より活発だった。
◆1月の日付変更線付近のOLR指数は対流不活発を示し、中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で西風偏差、下層で東風偏差を示していた。
◆赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、1月上旬から中旬にかけて太平洋の西部に見られた。位相の東進は不明瞭で、1月下旬にはインド洋で活発な位相が見られた。赤道季節内振動の位相に対応して、太平洋赤道域の中部の大気下層では1月を通じて顕著な東風偏差が見られ、西部では1月上旬から中旬にかけて西風偏差、1月下旬には東風偏差が見られた。
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今後の見通し(2008年2月〜2008年8月) |
1月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-1.5℃だった。11月の5か月移動平均値は-1.5℃だった。
1月の太平洋赤道域の海面水温は、中部で顕著な負偏差だった。
海洋表層の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差が見られた。
1月の太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は不活発、中部太平洋赤道域の東西風は上層で西風偏差、下層で東風偏差だった。
これらの状態は、ラニーニャ現象が持続していることを示している。
中部太平洋赤道域の大気下層の東風偏差に見られるように依然としてラニーニャ現象時の特徴が明瞭で、大気と海洋の相互作用により中部から東部にかけての海面水温が平年より低い状態は当面維持されると考えられる。一方、2007 年12月下旬から1月下旬にかけて西部太平洋赤道域の海洋表層に暖水の蓄積が見られ、この暖水の東進により次第に中部から東部にかけての海面水温負偏差が縮小すると考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、夏にかけて次第に基準値に近づくと予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後、夏にかけて次第に基準値に近づくと予測している。ラニーニャ現象は夏にかけて次第に弱まっていくと見込まれ、夏の初めまで持続する可能性が高い。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1998年1月〜2008年1月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |