気象人トップ 気象ダイアリー 天候のまとめ トピックス 気象の本棚 暦と出来事 海況・エルニーニョ データベース 読者のページ

2008年3月

●太平洋赤道域の海面水温は、中部から東部にかけての負偏差が前月より弱まった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温では、中部から東部にかけての負偏差が前月より弱まり、西部では顕著な正偏差が持続した。これらの状態は、ラニーニャ現象が弱まりつつあることを示している。

●エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後、次第に基準値に近づくと予測される。
ラニーニャ現象は今後、夏にかけて終息に向かう見込みである。




2008年3月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い

2008年3月の状況

◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の3月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.6℃だった。

◆南方振動指数は+1.3だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)

◆3月の太平洋赤道域の海面水温は、東経150度から西経110度にかけて平年より0.5℃以上低く、東経160度から西経120度では平年より1℃ 以上低かった。

◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、2月末に東経155度から西経100度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は、3月下旬には東経150度から西経110度にかけて見られた。また、2月末に東経170度から西経120度にかけて見られた-2℃以下の負偏差は、3月中旬には日付変更線付近で見られ、その後消滅した。一方、2月末に西経90度以東で見られた+0.5℃以上の正偏差は、3月下旬には西経100度以東で見られた。

◆3月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経155度から西経80 度にかけての海面から深度140mで平年より1℃ 以上低かった。東経165度から西経80度にかけての海面から90mでは-2℃以下の負偏差が見られた。一方、東経140度から西経170度にかけての深度60mから300mでは+1℃以上の正偏差が見られ 、東経140度から東経170度にかけての深度110mから220mでは以上の+3℃以上の正偏差が見られた。

◆太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、2月末に西経165度から西経95度にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、3月に入ると急速に狭まり、下旬には西経90度付近にのみ見られた。一方、東経165度以西では+1℃以上の正偏差が3月を通じて見られた。

◆3月の太平洋赤道域の対流活動は、東経130度付近で平年より活発、東経140度から西経170度にかけて平年より不活発だった。  

◆3月の日付変更線付近のOLR指数は対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で顕著な西風偏差が持続したが、下層の東風偏差は前月に比べて弱まった。

◆赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、3月上旬には南米からアフリカ付近にかけて、中旬にはインド洋に見られ 、下旬にはインド ネシア付近へ東進した。3月を通じて太平洋赤道域西部から中部にかけての大気下層で東風偏差が卓越した。一方、太平洋赤道域東部の大気下層では3月上旬に顕著な西風偏差が見られた。


今後の見通し(2008年4月〜2008年10月)

3月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-0.6℃だった。1月の5か月移動平均値は-1.4℃だった。
3月の太平洋赤道域の海面水温は、中部で顕著な負偏差だった。
海洋表層の水温では、中部から東部にかけて負偏差は2月より弱まり、西部の顕著な正偏差は持続した。
3月の太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は不活発、中部太平洋赤道域の東西風は上層で西風偏差、下層で東風偏差だった。

このようにラニーニャ現象は持続しているが、前月に引き続き、西部太平洋赤道域の海洋表層に暖水の蓄積が見られ、この暖水の東進により中部から東部にかけての海面水温負偏差がさらに縮小すると考えられる。

エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、今後さらに基準値に近づき、夏以降は基準値に近い値で推移すると予測している。

以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後、次第に基準値に近づくと予測される。ラニーニャ現象は今後、夏にかけて終息に向かう見込みである



エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度



エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値)
(1998年1月〜2008年3月)

太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。


2007年 2008年
エルニーニョ監視指数 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
基準値との差(℃) -0.5 -0.7 -0.6 -0.8 -1.1 -1.3 -1.5 -1.6 -1.7 -1.5 -1.4 -0.6
5か月移動平均(℃) -0.5 -0.6 -0.7 -0.9 -1.1 -1.3 -1.4 -1.5 -1.5 -1.4
南方振動指数 +0.1 -0.2 +0.5 -0.5 +0.4 +0.1 +0.7 +0.8 +1.6 +1.4 +1.8 +1.3


2月
4月

資料提供:気象庁
気象人トップ 気象ダイアリー 天候のまとめ トピックス 気象の本棚 暦と出来事 海況・エルニーニョ データベース 読者のページ
Copyright(C) weathermap 2024 All rights reserved ウェザーマップホームページ≫