●太平洋赤道域の海面水温は、負偏差が前月より弱まり、東部の南米近くでは正偏差が広がった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温では、負偏差が前月より弱まり、西部で顕著な正偏差が持続した。これらの状態は、ラニーニャ現象が弱まりつつあることを示している。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後、基準値に近い値で推移すると予測される。
ラニーニャ現象は夏にかけて終息に向かう見込みである。
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2008年4月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2008年4月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の4月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.3℃だった。
◆南方振動指数は+0.6だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆4月の太平洋赤道域の海面水温は、東経150度から西経120度にかけて平年より0.5℃以上低く、東経165度から西経145度では平年より1℃ 以上低かった。西経105度以東では+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、3月末に東経155度から西経110度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は、4月下旬には東経155度から西経140度にかけて見られた。また、4月上旬に東経175度付近および西経155度付近で見られた-1.5℃以下の負偏差は、4月下旬には消滅した。一方、3月末に西経95度以東で見られた+0.5℃以上の正偏差は、4月下旬には西経105度以東で見られた。
◆4月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経155度から西経110度にかけての海面から深度100mおよび西経105度から西経80度の深度130m以浅で平年より1℃以上低かった。一方、東経140度から西経170度にかけての深度70mから280mでは+1℃以上の正偏差が見られ、東経145度から東経165度にかけての深度150mから200mでは+4℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、4月には-1℃以下の負偏差は見られなくなった。東経165度以西では+1℃以上の正偏差が1から持続している。
◆4月の太平洋赤道域の対流活動は、東経130度付近で平年より活発、東経160度から西経170度にかけて平年より不活発だった。
◆4月の日付変更線付近のOLR指数は対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、前月と同様、大気の上層で顕著な西風偏差、下層では東風偏差だった。
◆赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、4月中旬にインド洋付近に見られたが明瞭な東進は見られない。太平洋赤道域の大気下層では、4月を通じて日付変更線付近を中心に東風偏差、東部で西風偏差が見られた。
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今後の見通し(2008年5月〜2008年11月) |
4月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-0.3℃だった。2月の5か月移動平均値は-1.1℃だった。
4月の太平洋赤道域の海面水温は、日付変更線の西側から中部にかけて負偏差、東部の南米近くで正偏差だった
海洋表層の水温では、負偏差は3月より弱まり、西部の顕著な正偏差は持続した
4月の太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は不活発、中部太平洋赤道域の東西風は上層で西風偏差、下層で東風偏差だった。
赤道域の海面水温に見られるラニーニャ現象の特徴は弱まり、西部太平洋赤道域の海洋表層に蓄積された暖水の東進による海面水温負偏差の縮小が考えられる。一方、大気では日付変更線付近で東風
偏差が持続していることから、中部から東部にかけての海面水温は平年に近い状態で推移すると考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、今後、基準値に近い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後、基準値に近い値で推移すると予測される。ラニーニャ現象は、夏にかけて終息に向かう見込みである。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1998年1月〜2008年4月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |