●太平洋赤道域の海面水温は負偏差域が前月より縮小し、エルニーニョ監視海域の海面水温は基準値に近い値となった。
ラニーニャ現象は春に終息したとみられる。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、夏から秋にかけて基準値に近い値で推移すると予測される。
夏の間はエルニーニョ現象あるいはラニーニャ現象が発生する可能性は低い。
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2008年5月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2008年5月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の5月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.1℃だった。
◆南方振動指数は-0.2だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆5月の太平洋赤道域の海面水温は、東経165度から西経135度にかけて平年より0.5℃以上低く、東経175度から西経155度では平年より1℃以上低かった。西経100度付近では+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、4月末に東経150度から西経130度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は、5月下旬には日付変更線から西経155度にかけて見られた。一方、4月末に西経105度から西経80度にかけて見られた+0.5℃以上の正偏差は、5月中旬には一旦狭まったが、下旬には西経120度から西経90度にかけて見られた。
◆5月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経170度から西経140度にかけての海面から深度80mで平年より1℃以上低かった。一方、東経140度から西経165度にかけての深度80mから260mと、西経120度から西経85度にかけての海面から深度120mでは+1℃以上の正偏差が見られた。また東経150度から東経165度にかけての深度160m付近では+4℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、4月末に東経160度以西で見られた+1℃以上の正偏差は、5月下旬には東経170度以西で見られた。
◆5月の太平洋赤道域の対流活動は、東経160度から日付変更線にかけて平年より不活発だった。
◆5月の日付変更線付近のOLR指数は対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層では西風偏差、下層では東風偏差だった。
◆赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、5月上旬にインドネシア付近に見られ、中旬から下旬にかけては南米付近からアフリカ西岸にかけて見られた。太平洋赤道域の大気下層では、5月を通じて日付変更線付近を中心に東風偏差が見られたが、4月に比べると弱まった。東部では西風偏差が持続した。
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今後の見通し(2008年6月〜2008年12月) |
5月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-0.1℃だった。3月の5か月移動平均値は-0.8℃だった。
5月の太平洋赤道域の海面水温は、負偏差域が4月よりも縮小した。
海洋表層の水温では、西部の顕著な正偏差は持続し、東部でも正偏差が見られた。また、5月の南方振動指数は-0.2だった。
これらの太平洋赤道域の状態から、ラニーニャ現象時の特徴はほぼ解消しており、ラニーニャ現象は春に終息したとみられる。
一方、5月の太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は不活発、中部太平洋赤道域の東西風は上層で西風偏差、下層で東風偏差で、大気の循環にはラニーニャ現象時の特徴が残っていた。
海洋では中部の海面水温に負偏差が見られるが、今後、西部太平洋赤道域の海洋表層に蓄積された暖水の東進によって、海面水温負偏差がさらに縮小することが考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、夏から秋にかけて基準値に近い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、夏から秋にかけて基準値に近い値で推移すると予測される。夏の間はエルニーニョ現象あるいはラニーニャ現象が発生する可能性は低い。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1998年1月〜2008年5月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |