●太平洋赤道域の海面水温は、西部と東部で正偏差が見られ、中部では負偏差が持続した。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温は、西部と東部で正偏差、中部で負偏差だった。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後基準値に近い値で推移すると予測される。
今後冬にかけてエルニーニョ現象あるいはラニーニャ現象が発生する可能性は低い。
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2008年8月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2008年8月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の8月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は+0.6℃だった。
◆南方振動指数は+1.0だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆8月の太平洋赤道域の海面水温は、東経175度から西経165度にかけて平年より0.5℃以上低かった。一方、東経135度から東経145度にかけてと西経125度以東では+0.5℃以上の正偏差が見られ、西経110度から西経85度にかけては+1℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、7月から8月にかけて、-0.5℃以下の負偏差が日付変更線から西経160度にかけて見られた。一方、7月末に西経130度から西経85度にかけて見られた+0.5℃以上の正偏差は、8月下旬には西経110度から西経85度にかけて見られ、8月中旬には西経100度付近で+2℃以上の正偏差が見られた。また、7月下旬に東経145度以西に現れた+0.5℃以上の正偏差は、8月下旬には東経140度から東経155度にかけて見られた。
◆8月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、西経165度から西経125度にかけての深度70mから200mで平年より1℃以上低かった。一方、東経140度から東経175度にかけての深度90mから190mと、西経115度から西経80度にかけての海面から深度70mでは+1℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、8月上旬の西経160度付近および8月下旬の西経150度付近に-1℃以下の負偏差が見られた。西部では7月以降弱い正偏差が持続し、東部では7月から8月にかけて正偏差が弱まった。
◆8月の太平洋赤道域の対流活動は、東経125度付近で平年より活発だった。
◆8月の日付変更線付近のOLR指数は対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層では西風偏差、下層では東風偏差だった。
◆赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、8月上旬にはインドネシア付近で見られ、中旬から下旬にかけては大西洋とインド洋で見られた。太平洋赤道域の大気下層では、8月を通じて西部から中部で東風偏差が見られ、東部で西風偏差が見られた。
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今後の見通し(2008年9月〜2009年3月) |
8月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は+0.6℃だった。6月の5か月移動平均値は+0.1℃だった。
8月の太平洋赤道域の海面水温は、西部と東部で正偏差が見られ、中部では負偏差が持続した。
海洋表層の水温では、西部と東部で正偏差が見られ、中部で負偏差が見られた。
太平洋赤道域では、日付変更線付近の対流活動が平年より不活発で、西部から中部にかけての大気下層では8月を通じて東風偏差が見られた。
エルニーニョ監視海域の海面水温は基準値よりやや高いものの、太平洋赤道域における表層水温や大気の循環には、中部から東部にかけての海面水温偏差をさらに増大させる兆候は見られない。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、予測期間中、基準値に近い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後基準値に近い値で推移すると予測される。今後冬にかけてはエルニーニョ現象あるいはラニーニャ現象が発生する可能性は低い。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1998年1月〜2008年8月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |