●エルニーニョ監視海域の海面水温は基準値に近い値だった。太平洋赤道域の海面水温は、西部と東部で正偏差、中部では負偏差だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温は、中部の負偏差が強まり、西部の正偏差が持続した。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後基準値に近い値で推移すると予測される。
今後冬にかけてエルニーニョ現象あるいはラニーニャ現象が発生する可能性は低い。
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2008年9月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2008年9月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の9月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は+0.6℃だった。
◆南方振動指数は+1.2だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆8月の太平洋赤道域の海面水温は、東経175度から西経155度にかけて平年より0.5℃以上低かった。一方、東経140度から東経150度にかけてと西経115度以東では+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、8月末に東経175度から西経165度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は、9月下旬には東経175度から西経150度にかけて見られた。一方、8月末に西経115度から西経85度にかけて見られた+0.5℃以上の正偏差は、9月下旬には西経110度から西経80度にかけて見られ、8月末に西経110度から西経90度にかけて見られた+1℃以上の正偏差は9月中旬には消失した。また、9月中旬から下旬にかけて東経150度付近に+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆9月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経175度から西経105度にかけての海面から深度200mで平年より1℃以上低かった。一方、東経140度から東経170度にかけての深度60mから210mと、西経105度から西経95度にかけての海面から深度30mでは+1℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、8月末に西経150度から西経140度にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、9月下旬には西経160度から西経120度にかけて見られた。また、9月下旬には西経140度付近で-2℃以下の負偏差が見られた。一方、東経155度付近では9月下旬に+1℃ 以上の正偏差が見られた。
◆9月の日付変更線付近のOLR指数は平年並を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層では西風偏差、下層では東風偏差だった。
◆赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、9月上旬から中旬にかけてはインド洋の東部から太平洋の西部にかけて見られ、下旬には南米付近で見られた。太平洋赤道域の大気下層では、9月上旬から中旬にかけて西部から中部で東風偏差が見られたが、下旬には弱まった。
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今後の見通し(2008年10月〜2009年4月) |
9月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は+0.2℃で、7月の5か月移動平均値は+0.2℃だった。
9月の太平洋赤道域の海面水温は、西部と東部で正偏差、中部では負偏差だった。
海洋表層の水温は、中部の負偏差が強まり、東部の正偏差が弱まった。西部の正偏差は持続した。
太平洋赤道域では、日付変更線付近の対流活動は平年並で、西部から中部にかけての大気下層では9月上旬から中旬にかけて東風偏差が見られたが、下旬には弱まった。
エルニーニョ監視海域の海面水温は、7〜8月には基準値よりやや高い値だったが、9月には基準値に近い値となった。今後、中部太平洋赤道域の表層水温の負偏差が東進して、一時的に東部の海面水温偏差を低下させることが考えられる。しかし、西部には暖水の蓄積が見られ、西部から中部にかけての東風偏差は弱まっていることから、海面水温偏差が大きく低下するとは考えにくい。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、予測期間中、基準値に近い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後基準値に近い値で推移すると予測される。今後冬にかけてはエルニーニョ現象あるいはラニーニャ現象が発生する可能性は低い。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1998年1月〜2008年9月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |