【さくら2023】記録的な暖春 北・東日本は最も早いお花見シーズン入り片山由紀子 (ウェザーマップ・気象予報士)
地域 | 平均気温の平年差 | 日照時間の平年比 |
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北日本 | 2.2℃(かなり高い) | 114%(かなり多い) |
東日本 | 2.2℃(かなり高い) | 112%(かなり多い) |
西日本 | 1.3℃(かなり高い) | 109%(かなり多い) |
春の気温は全国的に平年を大幅に上回り、北日本と東日本は1946年以降、最も高くなり、西日本も2番目の高温となった。暖かい空気の影響で、札幌、東京、名古屋では観測史上最高となり、記録的な暖春となった。
春の日照時間は冬型の気圧配置が弱かった影響で、北日本日本海側を中心に非常に多くなった。青森では平年の約1.3倍にあたる644.6時間に達し、観測史上最大となった。
開花
3月14日、全国(沖縄・奄美を除く)のトップを切って、東京でさくらが開花した。東京のトップ開花は2020年以来、3年ぶりのこと。3月の記録的な高温で、花芽の成長が非常に早く、一気にさくらが開花した印象が強い。
今年のさくら前線も非常に早いペースで北上し、北陸(福井、金沢、富山、新潟)と東北(福島、山形、仙台、盛岡、秋田、青森)では観測史上最も早い開花となった。そのため、北日本ではゴールデンウイークを待たずにさくらの季節を迎えた。
札幌では4月15日、記録的な早さでさくらが開花し、お花見シーズン到来となった。さくら前線は昨シーズンよりも5日早い5月3日、稚内で終わり、約2か月をかけて日本列島を北上した。この3年間は新型コロナの流行で、花見が自粛されていたが、今年は4年ぶりにイベントが開催されるなど、名所はどこも花見客らで混雑した。
満開
3月22日、全国のトップを切って、東京で満開となった。この日は全国的に晴れて、初夏を思わせる陽気となった。大阪や長崎では観測史上最も早い夏日、福井では3月としては44年ぶりに、最高気温が25℃を超えた。
さくらが開花した後も、気温の高い状態が続き、各地で満開も早くなった。西・東日本は平年と比べて5日~10日程度、北海道は2週間くらい早くなった。北海道では開花から満開までの日数が短く、帯広や稚内はわずか2日で見頃を迎えた。
今シーズン全国最後の満開となったのは5月5日の稚内で、平年より11日早かった。さくら前線の終着地が稚内となるのは2018年以来、5年ぶりのことである。
さくら前線にも温暖化が色濃く IPCC第6次報告書と京都のさくら
今年は東京や京都など全国の半数で観測史上最も早く開花した一方で、大分や鹿児島は平年並みでした。象徴的なのが鹿児島と仙台です。通常、鹿児島と仙台では開花に約2週間程度の差がありますが、今年はその差がわずか2日となりました。南国ほど早く開花するイメージは崩れつつあるのかもしれません。
また、今年は9年ぶりとなるIPCC第6次統合報告書が公表されました。そのなかで今回初めて京都のさくらが取り上げられ(※)、気候変動の影響を受けていることが世界的にも明らかになりました。
津軽海峡のブラキストン線
田畑のあぜ道に、ひっそりとたたずむ一本桜は昔から農作業の目安とされてきたように、さくらは天候に敏感です。そのさくらがかつてないほどの早さで開花しています。二酸化炭素(CO2)の増加だけでは説明がつかない何かが起こっているのかもしれません。
さくら開花は一日あたり約23キロの速さで東北地方を北上してきました。津軽海峡の幅は最も狭い所で20キロ程度しかなく、これでは一日で渡り切ってしまう距離です。さくら開花は一日あたり約23キロの速さで東北地方を北上してきました。津軽海峡の幅は最も狭い所で20キロ程度しかなく、これでは一日で渡り切ってしまう距離です。
しかし、津軽海峡にはブラキストン線といって、動物地理学上の境界線があります。これをさくらにも当てはめることができ、青森と函館では開花に6日の差があります。つまり、順調に北上してきたさくら前線も、急にスピードが落ちてしまうのです。
3月は過去例のない高温でしたが、暖かさは今後も衰えることはないでしょう。動物にとってのブラキストン線は残っても、さくらの境界線は消えゆく運命に。それを実感する年になりました。