●太平洋赤道域の中部から東部では、海面水温の正偏差域が2月に比べて縮小した。海洋表層(海面から深度数百m までの領域)水温に関しては、東部が負偏差で占められている。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、春の間は基準値(1961 〜1990 年の30 年平均値)に近い値をとり、その後は基準値よりやや高い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低い。
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2004年3月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2004年3月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の3月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は+0.3℃。
◆南方振動指数は+0.1。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆3月の太平洋赤道域の海面水温は東経135 度から東経165 度にかけてと西経120 度から西経105 度で平年より0.5℃ 以上高かった。一方、西経155 度から西経125 度にかけてと西経100 度以東で負偏差が見られ、西経85 度以東では平年より1℃以上低かった。
◆太平洋赤道域の中部から東部では、西経105 度付近を除いて正偏差域が2 月に比べて縮小した。
◆太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経145 度の深度50m から東経170 度の深度100m にかけてと東経155 度以西の深度150m から深度230m で平年より1℃ 以上高かった。また、西経135 度から西経100 度の深度50m から深度140m にかけてと西経90 度以東の深度100m 以浅では平年より1℃ 以上低かった。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260m までの平均水温平年偏差の経度-時間断面図では、3 月初めに西経140 度付近に現れた-0.5℃以下の負偏差域は、東進して3 月末に西経135 度から西経100 度で見られ、西経115 度付近には・-1℃ 以下の負偏差域が出現した。一方、3 月末に東経160 度付近で+1℃ 以上の正偏差域が現れた。
◆太平洋赤道域の対流活動は、2 月に引き続き西部で平年より活発、日付変更線以東で不活発だった。太平洋中部の赤道東西風指数は、上層で西風偏差、下層で東風偏差を示した。
赤道季節内振動に伴う対流活動の活発な位相が太平洋を東進した。これに対応して大気下層では、上旬から中旬にかけて中部で東風偏差が強まった一方、中旬には西部で、下旬には日付変更線付近で西風偏差が卓越した。
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今後の見通し(2004年4月〜2004年10月) |
赤道付近の大気では2003 年12 月以来、明瞭な赤道季節内振動に伴う30 〜40 日前後の短周期変動が卓越している。
太平洋赤道域において、3 月中旬までは中部で2 月に引き続き東風偏差の強まりが見られ、3 月中旬以降は西部から日付変更線にかけて西風偏差が強まった。これらに対応して、中部から東部では、海面水温の正偏差域が2 月に比べて縮小した。表層水温に関しては、東部が負偏差で占められ、正偏差は西部に限られた。3 月末に西部で正偏差の強まりが見られるものの、現時点では東部太平洋赤道域の海面水温偏差を今後大きく増大させるまでには至っていないと判断される。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温の基準値との差が春から夏にかけて次第に増加し、その後持続する傾向を示している。モデルは、監視海域の海面水温が夏以降に基準値より高い値をとると予測しているが、現在の海洋の状況を重視すると、モデルの予測値よりも若干低めに推移すると考えられる。
以上のことから、監視海域の海面水温は、春の間は基準値に近い値をとり、その後は基準値よりやや高い値で推移するとみられ、予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低いと判断される。
ただし、西部太平洋赤道域で強まりつつある表層水温の正偏差については今後も動向を注意深く監視していく。
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下) (1994年1月〜2004年3月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |