●太平洋赤道域の海面水温は、ほぼ平年並だった。海洋表層（海面から深度数百mまでの領域）水温に関しては、西経120度以東で負偏差、西経150度以西で正偏差が卓越していた。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、春から夏にかけて基準値（1961〜1990年の30年平均値）に近い値をとり、秋には基準値よりやや高い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低い。
|
2004年4月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤：28℃以上 (下)青：平年より低い
|
|
| 2004年4月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域（北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度）の4月の海面水温の基準値（1961〜1990年の30年平均値）との差は+0.2℃。
2月の5か月移動平均値は+0.4℃となり、5か月ぶりに+0.5℃を下回った。
◆南方振動指数は-1.4。（貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。）
◆4月の太平洋赤道域の海面水温は東経145 度から東経155 度にかけてと東経160 度から西経175 度で平年より0.5℃以上高かった。一方、西経110 度から西経100 度にかけてと西経85 度付近では平年より0.5℃以上低かった。
◆太平洋赤道域東部では、4 月に入って西経110 度以東で負偏差域が拡がった。
◆太平洋の赤道に沿った表層（海面から深度数百mまでの領域）水温は、東経150 度の深度100m から西経170 度の深度150m にかけて平年より2℃以上高かった。一方、西経115 度から西経95 度の深度50m から深度100m にかけてと西経110 度以東の深度25m 付近では平年より2℃以上低かった。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260m までの平均水温平年偏差の経度-時間断面図では、3 月末に西経120 度付近に現れた−1℃ 以下の負偏差域は、東進して4 月末に西経100 度から西経90 度で見られた。一方、3 月末に東経150 度付近に現れた+1℃以上の正偏差域は、東進して4 月末には東経175 度から西経150 度で見られた。
◆太平洋赤道域の対流活動は、東経170 度付近で平年より活発、ニューギニア島付近および東部で不活発だった。太平洋中部の赤道東西風指数は、上層で平年並、下層で東風偏差を示した。
赤道季節内振動に伴う対流活動の活発な位相が太平洋を東進した。これに対応して大気下層では、上旬から中旬にかけて東経150 度付近を中心に西風偏差が強まったが、下旬には太平洋赤道域のほぼ全域で東風偏差が卓越した。
|
|
|
| 今後の見通し（2004年5月〜2004年11月） |
4月の太平洋赤道域の海面水温は、中部・西部で平年より高く、西経115 度以東で低かったが、1℃を超える偏差は正負ともに見られず、ほぼ平年並であった。
赤道付近の大気は、2004 年に入って、平均的には日付変更線付近を中心に下層で東風偏差が卓越しているが、30〜40日周期の短周期変動も活発である。海洋表層水温に関しては、西経120 度以東を依然負偏差が占める一方、3 月末の西風偏差によって励起された正偏差域が中部を東進しつつある。しかし、4 月下旬から広い範囲で卓越している東風偏差がこの正偏差を弱めるようにはたらくことから、東進中の正偏差域が今後1〜2 か月のうちに東部に到達しても、監視海域の海面水温偏差を大きく増大させる可能性は低いと判断される。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温の基準値との差が春から夏にかけて次第に増加し、その後持続する傾向を示している。モデルは、監視海域の海面水温が夏以降に基準値より高い値をとると予測しているが、上述した太平洋赤道域の大気・海洋の実況を重視すると、モデルの予測値よりも若干低めに推移すると考えられる。
以上のことから、監視海域の海面水温は、春から夏にかけて基準値に近い値をとり、秋には基準値よりやや高い値で推移するとみられ、予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は低いと判断される。
ただし、活発な大気の短周期変動により再び下層で西風偏差が強まる可能性もあるので、引き続き今後の推移を注意深く監視していく。
|
|
|
|
エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1994年1月〜2004年4月）
太線は5か月移動平均値
赤：エルニーニョ現象 青：ラニーニャ現象 発生期間
|
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |
3月
5月