●太平洋赤道域では上旬に広い範囲で東風偏差が卓越し、西経110 度以東で海面水温の負偏差が一時的に強まったものの、後半には平年値に近づいた。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、夏の間、基準値（1961〜1990 年の30 年平均値）に近い値をとり、その後基準値よりやや高い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生する可能性は低い。
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2004年5月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤：28℃以上 (下)青：平年より低い
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| 2004年5月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域（北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度）の5月の海面水温の基準値（1961〜1990年の30年平均値）との差は0.0℃。
◆南方振動指数は+1.2。（貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。）
◆5月の太平洋赤道域の海面水温は西経115 度から西経85 度で平年より0.5℃ 以上低かった。一方、東経145 度付近、東経155 度から西経175 度にかけてと西経160 度付近では平年より0.5℃以上高かった。
◆太平洋赤道域では-0.5℃以下の負偏差域が5月上旬に西経110 度以東を占めたが、その後は縮小して下旬には西経90 度付近にのみ見られた。
◆太平洋の赤道に沿った表層（海面から深度数百mまでの領域）水温は、西経115 度以東の深度100m 以浅で平年より1℃以上低く、西経100 度から西経85 度の深度70m 以浅では、-2℃以下の負偏差も見られた。一方、東経155 度から西経140 度の深度100m 付近と東経140度の深度180m 付近では平年より1℃ 以上高かった。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260m までの平均水温平年偏差の経度-時間断面図では、3 月末に西経120 度付近に現れた-1℃以下の負偏差域は、東進して5 月初めに西経90度付近まで達した。一方、4 月に中部を東進していた+1℃ 以上の正偏差域は、5 月に入ると急速に弱まった。また、5 月末に+0.5℃以上の正偏差域が東経165 度以西に現れた。
◆太平洋赤道域の対流活動は、西部で平年より活発、中部で不活発だった。赤道季節内振動に伴う対流活動の活発な位相が上旬から中旬にかけてインド洋から太平洋西部を東進した。これに対応して大気下層では、上旬に太平洋赤道域の広い範囲で東風偏差が卓越した。
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| 今後の見通し（2004年6月〜2004年12月） |
赤道付近の大気は、2003 年12 月以降、赤道季節内振動に伴う30〜40 日周期の短周期変動が活発で、5 月上旬には太平洋の広い範囲で東風偏差が強まった。その結果、西経110 度以東では海面水温の負偏差が一時的に強まり、監視海域の海面水温の基準値との差は4 月に比べて減少し、0.0℃となった。
海洋表層（海面から深度数百m までの領域）でも、4 月に中部を東進していた水温の正偏差域が急速に縮小した。しかし、この東風偏差は月の後半に弱まり、西経110 度以東の海面水温は中旬以降、平年値に近づきつつある。また、表層水温には今後１〜２か月間に監視海域の海面水温の基準値との差を大きく変化させるような偏差が見られない。
このように、現在の太平洋赤道域の大気・海洋の状況は、短周期の変動が見られるものの、平均的にはほぼ平年に近い。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温の基準値との差が夏から秋にかけて次第に増加し、その後持続する傾向を示している。モデルは、監視海域の海面水温が夏以降に基準値より高い値をとると予測しているが、上述した太平洋赤道域の大気・海洋の実況を重視すると、モデルの予測値よりも若干低めに推移すると考えられる。
以上のことから、監視海域の海面水温は、夏の間は基準値に近い値をとり、その後基準値よりやや高い値で推移するとみられ、予測期間中にエルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生する可能性は低いと判断される。
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1994年1月〜2004年5月）
太線は5か月移動平均値
赤：エルニーニョ現象 青：ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |
4月
6月