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2004年7月

●太平洋赤道域では、7 月前半に中部から東部にかけて大気下層で西風偏差が見られた。中部では海面水温の正偏差が増大し、海洋表層(海面から深度数百m までの領域)水温の正偏差域は強まりながら東進し、その一部が東部にまで拡がった。

●エルニーニョ監視海域の海面水温は、秋から冬にかけて基準値(1961〜1990 年の30 年平均値)よりもやや高い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は依然として低いが、今後の大気・海洋の状況には十分注意を要する。




2004年7月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い

2004年7月の状況

◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の7月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は+0.2℃

◆南方振動指数は-0.6。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)

◆7月の太平洋赤道域の海面水温は、日付変更線付近、西経170 度付近及び西経160 度から西経145 度で平年より1℃以上高かった。一方、東経125 度付近及び西経110 度以東では平年より0.5℃以上低かった。

◆中部太平洋赤道域では海面水温の正偏差が強まり、7 月中旬以降に日付変更線から西経140 度で+1℃以上の正偏差が見られた。

◆7 月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百m までの領域)水温は、西経175 度から西経135 度の深度70m から深度170m にかけて+2℃以上の正偏差が見られた。一方、西経110 度から西経90 度の深度30m から深度80m で−2℃以下の負偏差が見られた。

◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260m までの平均水温平年偏差の経度-時間断面図では、6 月下旬に西経130 度から西経105 度で見られた−1℃以下の負偏差域は、7 月中旬に消滅した。一方、6 月下旬に東経165 度付近に現れた+1℃ 以上の正偏差域は強まりながら東進し、7 月中旬には西経150 度付近に+2℃以上の正偏差が現れた。その後、+2℃以上の正偏差は7 月下旬に消滅したが、+1℃以上の正偏差域は7 月末に西経165 度から西経120 度にまで達した。

◆太平洋赤道域の対流活動は、ほぼ平年並だった。

◆赤道季節内振動に伴う対流活動の東進に対応して、太平洋赤道域の大気下層では、7 月前半には中部から東部にかけて西風偏差が卓越し、7 月末には逆にほぼ全域で東風偏差が見られた。


今後の見通し(2004年8月〜2005年2月)

西部太平洋赤道域では、6 月下旬に強まった大気下層の西風偏差によって、表層水温の正偏差域が生じた。この正偏差域は、7 月前半に中部から東部にかけて新たに現れた西風偏差に対応して強まりながら東進し、その一部が東部にまで拡がった。それとともに、海面水温の正偏差は7 月中旬以降、中部の広い範囲で増大した。

表層水温の正偏差域は今後1 か月前後で南米大陸沿岸に到達し、監視海域の海面水温の基準値との差を増加させると予想される。しかし、7 月下旬に太平洋赤道域のほぼ全域で現れた東風偏差によって表層水温の正偏差はやや弱まりつつあり、一方、南米大陸沿岸の表層は負の水温偏差で覆われていることから、監視海域の海面水温偏差が一気に増大する可能性は低い。

エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温の基準値との差が今後、秋にかけて次第に増加し、その後持続する傾向を示している。しかし、予測モデルは海面水温をここ数か月実際より高めに予測する傾向があることを考慮する。

以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は秋から冬にかけて基準値よりやや高い値で推移するとみられるものの、現時点では予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は依然として低いと判断される。
ただし、中部太平洋赤道域で海面水温及び表層水温が平年よりも高く、大気や海洋の変化が発達しやすい状態になっていること、西風偏差をもたらし得る活発な対流活動域が西部で現れつつあることから、今後の大気・海洋の状況には十分注意を要する。





エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1994年1月〜2004年7月)

太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。


2003年 2004年
エルニーニョ監視指数 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
基準値との差(℃) +0.3 +0.2 +0.6 +0.6 +0.6 +0.6 +0.3 +0.3 +0.2 0.0 +0.1 +0.2
5か月移動平均(℃) +0.3 +0.4 +0.5 +0.5 +0.6 +0.5 +0.4 +0.3 +0.2 +0.1

南方振動指数 0.0 -0.1 -0.1 -0.2 +1.1 -1.0 +0.8 +0.1 -1.4 +1.2 -1.1 -0.6

6月
8月

資料提供:気象庁
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