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2004年9月

●太平洋赤道域の海面水温は、中部の正偏差が増大し、東部の負偏差域が急速に縮小した。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は全域で正偏差となった。一方、大気に関しては、中部の対流活動や貿易風が依然として平年並であった。

●エルニーニョ監視海域の海面水温は、秋から冬にかけて基準値(1961〜1990 年の30 年平均値)よりやや高い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は現時点では高くないものの、今後の推移によってはエルニーニョ現象の発生に至ることも考えられる。




2004年9月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い

2004年9月の状況

◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の9月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は+0.3℃

◆南方振動指数は-0.2。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)

◆9月の太平洋赤道域の海面水温は、東経160度から西経135度にかけて平年より0.5℃以上高く、東経165度から西経155度にかけては平年より1℃以上高かった。一方、東経125度付近では平年よりも0.5℃以上低かった。

◆太平洋赤道に沿った海面水温は、7月に現れた+1℃以上の正偏差域が、9月末には東経165 度から西経150 度に見られた。9 月初めに西経120 度以東で見られた負偏差域は縮小し、9月末には西経115 度付近と西経100 度付近のみで見られた。

◆9月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百m までの領域)水温は、日付変更線から西経115 度の深度50m 付近から深度180m にかけてと東経165 度以西の深度150m から深度200m で+1℃以上の正偏差が見られた。特に、西経165 度の深度150m から西経125 度の深度100m にかけては+2℃以上の正偏差が見られた。

◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260m までの平均水温平年偏差の経度-時間断面図では、8月末に日付変更線から西経145 度に見られた+1℃以上の正偏差域は東進し、9 月半ばにその東端が西経125 度付近まで達した。9 月末に+1℃ 以上の正偏差は消滅したが、+0.5℃以上の正偏差が西経100 度以西を占めた。

◆太平洋赤道域の対流活動は、西部で平年より活発、インドネシア付近で平年より不活発で、それ以外は平年並だった。また、フィリピン付近の対流活動は不活発だった。

◆太平洋赤道域の大気下層では、9月前半に中部から東部で西風偏差が見られ、9 月後半にほぼ全域で東風偏差が卓越した。赤道季節内振動に伴う対流活発域の東進が、9月下旬にインド洋から西部太平洋で見られた。


今後の見通し(2004年9月〜2005年4月)

太平洋赤道域では、中部の海面水温の正偏差が8月よりも更に増大した。8 月半ばに西部に現れた表層水温の正偏差域は、9 月前半に中部から東部で見られた西風偏差に対応して強まりながら東進し、9 月下旬に東部へ達した。これによって、東部の海面水温の負偏差域は9 月末にほぼ消滅し、表層水温は広く全域で正偏差となった。しかし、今後監視海域の海面水温の基準値との差を更に著しく増加させるような、表層水温の正偏差域の新たな東進は、9 月末の時点では見られない。

一方、大気に関しては、インドネシア付近の対流活動が6月以降平年より不活発である。しかし、中部の対流活動は、7 月以降この海域で海面水温の高い状態が続いているにもかかわらず、依然として平年並で、貿易風の弱まりも顕著ではない。

表層水温のこの正偏差は、今後強まりながらさらに東進し、東部の海面水温偏差を増大させる可能性が高い。しかし、季節的に東部の海面水温が低いことから、大気との相互作用は起きにくいと考えられる。また大気の状況に関しては、中部の対流活動が活発ではなく、表層水温の正偏差をさらに強める平均的な貿易風の弱まりが顕著ではない。したがって、東部の海面水温偏差の増大がそのまま持続する可能性は低い

以上のことから、監視海域の海面水温は秋から冬にかけて基準値よりやや高い値で推移するとみられるものの、現時点では予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は高くないと判断される。
ただし、海面水温が平年より高い中部太平洋赤道域では、潜在的に対流活動が活発になり貿易風が弱まりやすい状態が依然として続いている。加えて、赤道季節内振動に伴う活発な対流活動域が9月下旬にインド洋から西部太平洋赤道域へ進んできており、これに伴う強い西風偏差が表層水温の正偏差域の東進を引き起こし、エルニーニョ現象の発生に至ることも考えられる。したがって、今後の大気・海洋の状況には十分注意を要する。





エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1994年1月〜2004年9月)

太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。


2003年 2004年
エルニーニョ監視指数 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月
基準値との差(℃) +0.6 +0.6 +0.6 +0.6 +0.3 +0.3 +0.2 0.0 +0.1 +0.2 +0.4 +0.3
5か月移動平均(℃) +0.5 +0.5 +0.6 +0.5 +0.4 +0.3 +0.2 +0.1 +0.2 +0.2

南方振動指数 -0.1 -0.2 +1.1 -1.0 +0.8 +0.1 -1.4 +1.2 -1.1 -0.6 -0.5 -0.2

8月
10月

資料提供:気象庁
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