●太平洋赤道域の海面水温や表層水温はほぼ全域で正偏差となり、とくに中部の海面水温は+1℃前後の正偏差が持続した。しかし、中部の対流活動や貿易風は依然として平年並であった。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、冬から春にかけて基準値(1961〜1990 年の30 年平均値)よりやや高い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は現時点では高くないものの、今後の推移によっては、春にエルニーニョ現象の発生に至ることも考えられる。
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2004年10月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2004年10月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の10月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は+0.5℃。
◆南方振動指数は-0.2。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆10月の太平洋赤道域の海面水温は、東経160 度から西経135 度にかけてと西経125 度付近で平年より0.5℃以上高く、東経165 度から西経175 度にかけてと西経170 度から西経155 度にかけては平年より1℃ 以上高かった。
◆太平洋赤道に沿った海面水温は、10 月に入って東部の負偏差域が消滅した。+1℃ 以上の正偏差域は9 月に引き続き、東経165 度から西経155 度を中心に見られた。
◆10月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百m までの領域)水温は、東経155 度から東経170 度の深度25m から深度125m にかけてと、西経165 度から西経150 度の深度100m以浅、および20℃付近の等温線に沿った広い範囲で+1℃ 以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260m までの平均水温平年偏差の経度-時間断面図では、9 月に引き続きほぼ全域で正偏差となった。10 月上旬に東経160 度付近に現れた+1℃ 以上の正偏差域は東進し、10 月末にはその東端が西経150 度付近に見られた。
◆太平洋赤道域の対流活動は、インドネシア付近で平年より不活発、それ以外は平年並だった。
◆赤道季節内振動に伴う対流活発域の東進に対応して、太平洋赤道域では10 月前半には西部で、10 月後半には東部で西風偏差が卓越した。
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今後の見通し(2004年10月〜2005年5月) |
10 月の太平洋赤道域の海面水温はほぼ全域で正偏差となり、とくに中部では7 月以降+1℃ 前後の正偏差が持続している。海洋表層の水温についても、正偏差域が徐々に東部まで拡がってきた。しかしながら、大気に関しては、中部の対流活動は依然として平年並で、貿易風の弱まりも顕著ではない。
10 月に太平洋を通過した赤道季節内振動に伴う西風偏差によって、海洋表層では新たな正偏差域が10 月上旬に西部で現れ、中部を東進しつつある。しかし、西風偏差が10 月末には弱まったことから、この表層水温の正偏差がさらに強まる可能性は低い。したがって、表層水温の正偏差が今後1〜2 か月のうちに東部に到達しても、その海域の海面水温偏差に大きな変化をもたらさないと考えられる。統計的にみても、監視海域の海面水温は秋から冬にかけて大きく変化する傾向はない。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温の基準値との差が、冬から春にかけて次第に増加する傾向を示している。しかし、予測モデルは海面水温をここ数か月実際より高めに予測する傾向があることを考慮する。
以上のことから、監視海域の海面水温は冬から春にかけて基準値よりやや高い値で推移するとみられるものの、予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は現時点では高くないと判断される。
ただし、中部太平洋赤道域の海面水温が依然として平年より高く、潜在的に対流活動が活発になり貿易風が弱まりやすい状態が続いていること、春は監視海域の海面水温偏差が大きく変わりやすい時期であることから、今後の推移によっては、春にエルニーニョ現象の発生に至ることも考えられるので、大気・海洋の状況を引き続き注意深く監視していく。
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下) (1994年1月〜2004年10月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |