●太平洋赤道域の海面水温は、中部を中心に正偏差域がほぼ全域で見られた。しかし、貿易風の状態や中部の対流活動は依然として平年並であった。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、基準値(1961〜1990 年の30 年平均値)より高い現在の値から次第に低下し、春以降は基準値よりやや高い値に落ち着くとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は現時点では高くないものの、今後の推移によってはこのままエルニーニョ現象の発生に至ることも否定できない。
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2004年12月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2004年12月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の12月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は+0.7℃。
◆南方振動指数は-0.7。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆12月の太平洋赤道域の海面水温は、11月に引き続きほぼ全域で平年より0.5℃以上高く、東経165度から西経160度では平年より1℃以上高かった。
◆12月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百m までの領域)水温は、東経160 度の深度50m から西経160度の深度150mにかけて、さらにそれに続く西経160度以東の18℃から23℃の等温線を中心とした領域で+1℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図では、11月末に東経160度から西経105度にかけて見られた+0.5℃以上の正偏差域は東方に拡がり、12月末にはその東端が西経85度付近に達した。一方12月半ばに東経170度付近に現れた+1℃以上の正偏差域は、12月末には西経175度から西経140度を占めた。
◆太平洋赤道域の対流活動は、東経150度付近で平年より不活発だったほかは、ほぼ平年並だった。
◆赤道季節内振動に伴う対流活動の東進に対応して、太平洋赤道域の下層では12月前半に西部で西風偏差が卓越した。12月後半には、西経170度付近を除く広い範囲で東風偏差が卓越した。
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今後の見通し(2005年1月〜2005年7月) |
太平洋赤道域では、2004年に入って赤道季節内振動が周期的に通過し、それに伴う強い西風偏差が西部を中心に見られた。その結果、7月以降、海面水温や表層水温の正偏差域が徐々に中部から東部にかけて拡がってきた。
12月の太平洋赤道域の海面水温は、+1℃以上の正偏差域が中部を中心に見られたものの、ほぼ全域で平年より0.5℃以上高く、12月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は+0.7℃となった。しかしながら、大気に関しては、貿易風の状態や中部の対流活動は依然として平年並であった。
海洋表層では、12月半ばに西部で新たな正偏差域が出現し、現在東進しつつある。この正偏差域がこのまま東部に到達した場合、東部の海面水温が平年より高い現在の状態は今後数か月間さらに持続する可能性がある。しかしながら、12月末現在、西経170度付近を除く広い範囲で東風偏差が卓越しており、そのはたらきによって、東進中の表層水温の正偏差は弱まるとみられる。また、過去の統計によると、監視海域の海面水温は春に基準値に近い値をとる傾向が強い。
したがって、東部の海面水温の正偏差は今後次第に低下する可能性が高い。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温の基準値との差が、冬の間は現在の値を保ち、春以降は次第に増加すると予測している。しかし、予測モデルは春を越える予測精度が他の時期ほど高くない。また、予測モデルは海面水温をここ数か月間実際より高めに予測する傾向があることを考慮する。
以上のことから、監視海域の海面水温は基準値より高い現在の値から次第に低下して、春以降は基準値よりやや高い値に落ち着くとみられる。
中部を中心に海面水温の正偏差が持続しているにもかかわらずこれに対応する明瞭な変化が大気に認められないことから、予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は現時点では高くないと判断される。
ただし、潜在的に中部の対流活動が活発になり貿易風が弱まりやすい状態であることから、今後の推移によってはこのままエルニーニョ現象の発生に至ることも否定できないので、大気・海洋の状況を引き続き注意深く監視していく。
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下) (1994年1月〜2004年12月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |