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2005年1月

●太平洋赤道域の中部から東部では、大気下層で東風偏差が卓越した。その結果、海面水温及び海洋表層(海面から深度数百m までの領域)水温の正偏差は、東部を中心に弱まった。

●エルニーニョ監視海域の海面水温は、春には一旦、基準値(1961〜1990 年の30年平均値)に近づき、その後は基準値よりやや高い値で推移するとみられる。予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は現時点では高くないものの、今後の大気・海洋の状況には注意を要する。




2005年1月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い

2005年1月の状況

◆エルニーニョ監視海域(北緯4度〜南緯4度、西経150度〜西経90度)の1月の海面水温の基準値(1961〜1990年の30年平均値)との差は+0.4℃

◆南方振動指数は+0.3になり、8 か月ぶりに正となった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)

◆1月の太平洋赤道域の海面水温はほぼ全域で平年より高く、東経165度から西経170度にかけてと西経160度付近で平年より1℃以上高かった。12月末に広く見られた+0.5℃以上の正偏差域は縮小し、1月末には主として東経160度から西経140度に限られた。また、1月の後半には西経90 度以東で負偏差が現れた。

◆1月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百m までの領域)水温は、深度100m 以浅のほぼ全域で平年より高く、東経160 度から日付変更線にかけては+1℃以上の正偏差が見られた。一方、日付変更線以東の15℃の等温線を中心とする領域では負偏差が見られた。

◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図では、12月に中部から東部にかけて広く見られた+0.5℃以上の正偏差は1 月上旬に消滅した。1 月半ばに西経170 度付近に現れた負偏差は、1 月末に西経150 度から西経95 度まで拡がった。一方、1 月半ばに+0.5℃以上の正偏差が新たに出現し、1 月末に東経150 度から西経170 度で見られた。

◆太平洋赤道域の対流活動は、東経150 度付近を中心とする西部で平年より活発で、インドネシア付近では不活発だった。

◆赤道季節内振動に伴う対流活動の東進に対応して、太平洋赤道域の下層では1 月前半に西部で西風偏差が、中部から東部で東風偏差が卓越した。このような偏差の分布は赤道季節内振動の通過後も続いた。


今後の見通し(2005年2月〜2005年8月)

太平洋赤道域の海面水温は、2004年9月末以降、中部を中心にほぼ全域で平年より高い状態が続いている。2005年1月は西部で対流活動が活発になり、大気下層では中部から東部にかけて東風偏差が卓越した。その結果、東部を中心に海面水温の正偏差が弱まり、1月後半には西経90度以東で負偏差が現れた。1月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は、その前月の+0.7℃ から+0.4℃に低下した。表層水温では、太平洋赤道域のほぼ全域に広がっていた+0.5℃以上の正偏差域が東部から中部で縮小し、1 月下旬には東部で負偏差が見られた。したがって、2004 年の秋以降続いてきた東部の海面水温の正偏差の強まりは落ち着いてきたと考えられる

太平洋赤道域では、東西循環が平年よりも強まったことに加え、東部に海面水温の負偏差が出現したことから、東部を中心とする東風偏差は当面持続するとみられる。よって、今後1〜2 か月間は東部の海面水温偏差は更に低下すると判断される。
一方、エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温の基準値との差が次第に増加し、予測期間の後半は海面水温が基準値より高い値で推移すると予測している。しかしながら、予測モデルはここ数か月海面水温を実際よりも高めに予測する傾向があるので、春以降に基準値との差が増加するものの、その増加の程度はモデルの予測を下回ると考えられる。

以上のことから、監視海域の海面水温は春には一旦、基準値に近づき、その後は基準値よりやや高い値で推移するとみられ、予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は現時点では高くないと判断される
ただし、春には監視海域の海面水温偏差が大きく変化することが多く、また、中部では依然として海面水温が平年より高く、潜在的に対流が活発になり貿易風が弱まりやすい状態であることから、今後の大気・海洋の状況には注意を要する。





エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1994年1月〜2005年1月)

太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。


2004年 2005
エルニーニョ監視指数 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月
基準値との差(℃) +0.3 +0.3 +0.2 0.0 +0.1 +0.2 +0.4 +0.3 +0.5 +0.9 +0.7 +0.4
5か月移動平均(℃) +0.4 +0.3 +0.2 +0.1 +0.2 +0.2 +0.3 +0.5 +0.6 +0.6

南方振動指数 +0.8 +0.1 -1.4 +1.2 -1.1 -0.6 -0.5 -0.2 -0.2 -0.7 -0.7 +0.3

12月
2月

資料提供:気象庁
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