● 太平洋赤道域の海面水温は、ほぼ全域で平年より高く、日付変更線付近および東部で正偏差が顕著だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温は、中部から東部にかけて正偏差だった。太平洋赤道域の対流活動は西部で活発、その他はほぼ平年並だった。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は秋から冬にかけて基準値よりやや高い値で推移するが、その後は下降し、冬から春にかけて基準値に近い値で推移すると予測され、予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は高くない。
|

2006年9月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
|
|
2006年9月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の9月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は+0.8℃だった。
◆南方振動指数は-0.5だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆9月の太平洋赤道域の海面水温は、東経155度から南米沿岸にかけての広い範囲で平年より0.5℃以上高い正偏差が見られた。東経165度から西経170度にかけてと西経120度から南米沿岸にかけては平年より1℃以上高い正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、8月下旬以降、東経160度付近から南米沿岸にかけての広い範囲で+0.5℃以上の正偏差だった。8月下旬に東経170度から西経170度にかけて見られた+1℃以上の正偏差は9月下旬にはやや西に拡がり東経160度から西経170度にかけて見られた。一方、8月下旬から9月上旬にかけて見られた日付変更線付近の+1.5℃以上の正偏差は9月中旬にはなくなった。8月下旬に西経120度から南米沿岸にかけて現れた+1℃以上の正偏差は9月下旬まで持続し、9月上旬に南米沿岸に現れた+1.5℃以上の正偏差は西進して9月下旬には西経105度付近で見られた。
◆9月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経170度以東の深度150m以浅の広い範囲で平年より1℃以上高かった。西経130度の深度90m付近および西経110度以東の深度40m付近には+2℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、8月中旬に日付変更線付近に現れた +1℃以上の正偏差は東進し、9月下旬には西経95度付近に達した。
◆9月の中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で平年並、下層では東風偏差を示し、日付変更線付近のOLR指数は正偏差を示していた。
◆8月中旬から9月上旬にかけて、太平洋赤道域の大気下層の広い範囲で西風偏差が見られたが、9月中旬にはほぼ全域で東風偏差となった。9月下旬には、赤道季節内振動に伴う対流の活発域が西部太平洋に到達したことに伴い、日付変更線以西の大気下層で西風偏差が見られた。
|
|
|
今後の見通し(2006年10月〜2007年4月) |
9月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は+0.8℃だった。
9月の太平洋赤道域の海面水温は、ほぼ全域で平年より高く、日付変更線付近および東部では平年より1℃以上高い正偏差が見られた。
海洋表層の水温は、中部から東部にかけて正偏差だった。太平洋赤道域の対流活動は西部で活発、その他はほぼ平年並だった。
8月中旬に日付変更線付近に現れた海洋表層の暖水が東進して9月下旬には南米沖に達したこと、および、9月の大気の状況は概ね平年並であり、中旬以降、中部および東部の大気下層で東風偏差が持続していることから、東部の海面水温偏差がさらに上昇するとは考えられない。一方、9月下旬に見られた西部の西風偏差により海洋表層の暖水が東進し、秋から冬にかけて東部の海面水温偏差を維持または上昇させることも考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温が、秋から冬にかけて基準値よりやや高い値で推移し、冬から春にかけて基準値に近い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、秋から冬にかけて基準値よりやや高い値で推移するが、その後は下降し、冬から春にかけて基準値に近い値で推移すると予測され、予測期間中にエルニーニョ現象が発生する可能性は高くない。
|
|
|

|
エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
|

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1996年1月〜2006年9月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
|
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |