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2006年11月

●太平洋赤道域の海面水温は、ほぼ全域で平年より高く、日付変更線付近から南米沿岸にかけて正偏差が顕著だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温は、中部から東部にかけて顕著な正偏差が見られた。太平洋赤道域中部の東西風は上層で東風偏差、下層で平年並だった。

●エルニーニョ監視海域の海面水温は、冬は基準値より1℃程度高い値で推移し、春は基準値に近づき、やや高い値で推移すると予測される。エルニーニョ現象が今秋から発生している可能性が高く、春までは持続する見込みである。




2006年11月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い

2006年11月の状況

◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の11月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は+1.0℃だった。

◆南方振動指数は+0.1だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)

◆11月の太平洋赤道域の海面水温は、東経170度から南米沿岸にかけて平年より1℃以上高かった。日付変更線から西経160度にかけては平年より1.5℃以上高い正偏差が見られた。

◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度−時間断面図によると、8月下旬以降、東経165度付近から南米沿岸にかけて+0.5℃以上の正偏差が持続している。また、8月以降に日付変更線付近および東部太平洋で見られた1℃以上の正偏差は、11月には東経170度から南米沿岸にかけて見られた。

◆11月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経170度以東の深度200m以浅で+1℃以上の正偏差が見られた。日付変更線から西経150度にかけての深度130m付近と西経130度の深度90m付近には+3℃以上の正偏差が見られた。一方、東経160度以西の深度70mから280mでは-0.5℃以下の負偏差が見られた。

◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、10月上旬に東経175度付近に現れた+1℃以上の正偏差は東進し、11月下旬には西経100度付近に達した。また、11月下旬に西経125度付近で+2℃以上の偏差が見られた。一方、11月中旬以降の東経160度以西で-0.5℃以下の負偏差が見られた。

◆11月の中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で東風偏差、下層では平年並を示し、日付変更線付近のOLR指数は正偏差を示していた。

◆赤道季節内振動の東進は不明瞭だったが、11月中旬から下旬にかけてはインド洋西部の東経60度付近で、11月下旬には東経120度から日付変更線にかけて対流が活発な位相が見られた。これに伴い、太平洋赤道域の大気下層では、11月上旬には西部で西風偏差が、11月中旬には西部で東風偏差、中部から東部にかけて西風偏差が卓越し、11月下旬には全域で東風偏差となった。


今後の見通し(2006年12月〜2007年6月)

11月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は+1.0℃で、9月の5か月移動平均値は+0.6℃だった。
11月の太平洋赤道域の海面水温は、ほぼ全域で平年より高く、日付変更線付近から南米沿岸にかけて平年より1℃以上高い正偏差が見られた。
海洋表層の水温では、中部から東部にかけて顕著な正偏差が見られた。11月の太平洋赤道域中部の東西風は上層で東風偏差、下層で平年並だった。日付変更線付近の対流活動は、9月から11月にかけて平年より活発だった。
これらの海洋と大気の状況はエルニーニョ現象時の特徴を呈している。

10月上旬に東経175度付近に現れた+1℃以上の表層水温の正偏差は東進して11月下旬には西経100度付近に達した。10月中旬から11月中旬にかけて中部および東部で西風偏差が持続したことから、日付変更線以東では顕著な正偏差となった。この海洋表層の正偏差は今後1、2か月かけて東進して南米沿岸に達すると考えられる。このため、監視海域の海面水温が基準値より高い状態は今後1、2か月は持続すると推測され、冬の間は+1℃程度の偏差が持続すると考えられる。

エルニーニョ予測モデルは、監視海域の海面水温が、冬の間は基準値より1℃程度高い値で推移し、春は基準値より0.5℃程度高い値で推移すると予測している。

以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、冬は基準値より1℃程度高い値で推移し、春は基準値に近づき、やや高い値で推移すると予測される。エルニーニョ現象が今秋から発生している可能性が高く、春までは持続する見込みである。



エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度



エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値)
(1996年1月〜2006年11月)

太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。


2005年 2006年
エルニーニョ監視指数 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
基準値との差(℃) -1.2 -0.9 -0.4 -0.8 -0.2 0.0 0.0 +0.1 +0.4 +0.8 +0.9 +1.0
5か月移動平均(℃) -0.8 -0.8 -0.7 -0.5 -0.3 -0.2 +0.1 +0.3 +0.4 +0.6
南方振動指数 +0.2 +1.2 +0.1 +1.3 +1.0 -0.8 -0.4 -0.8 -1.3 -0.5 -1.2 +0.1

【 海面水温データと基準値の変更について 】
2006年3月より新しい海面水温データへの変更に伴い、エルニーニョ監視海域が北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度になりました。
また、海面水温の基準値はその年の前年までの30年間の各月の平均値に変更されました。
▲詳しくは気象庁発表資料をご参照下さい。

10月
12月

資料提供:気象庁
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