●東部で顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られた。中部および東部の大気下層では東風偏差が広く見られ、ラニーニャ現象に向かう時期の特徴を示していた。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、春から夏にかけて基準値よりやや低い値で推移し、夏から秋にかけては同程度か、さらに低い値で推移すると予測され、今後1、2か月の内にラニーニャ現象が発生する可能性が高い。
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2007年3月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2007年3月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の3月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.5℃だった。
◆南方振動指数は+0.1だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆3月の太平洋赤道域の海面水温は、西経135度から南米沿岸にかけて平年より0.5℃以上低く、西経110度付近では平年より1℃以上低かった。一方、東経150度から東経170度にかけては+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度−時間断面図によると、2月末以降、西経135度以東で-0.5℃以下の負偏差が見られ、3月上旬と下旬には-1℃以下の負偏差が見られた。一方、2月下旬に東経160度から日付変更線にかけて見られた+0.5℃以上の正偏差は西に移動し、3月下旬には東経150度から東経165度にかけて見られた。
◆3月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、西経170度から西経80度にかけての海面から深度170mで平年より1℃以上低かった。西経110度から西経80度にかけての深度20mから80mでは-3℃以下の負偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度−時間断面図によると、2月末に西経130度から西経90度にかけて見られた-1℃以下の負偏差域は東進し、3月下旬には西経100度から西経80度にかけて見られた。また、3月中旬以降、西経145度から西経110度にかけて-1℃以下の負偏差が見られた。
◆3月の太平洋赤道域の対流活動は、東経150度付近で平年より活発、日付変更線から西経120度にかけて不活発だった。
◆3月の日付変更線付近のOLR指数は負偏差を示し、中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層では平年並、下層では東風偏差を示していた。
◆3月の赤道季節内振動の東進は不明瞭だったが、2月下旬から3月上旬にかけてと3月下旬に東経160度付近で対流活発な位相が見られた。これに伴い、3月上旬および下旬に東経150度付近で西風偏差が見られた。一方、東経170度以東では3月を通して東風偏差が見られ、2月下旬から3月上旬および3月下旬には西経170度付近で、3月末には西経120度付近で東風偏差が強まった。
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今後の見通し(2007年4月〜2007年10月) |
3月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-0.5℃で、2007年1月の5か月移動平均値は+0.5℃だった。
3月の太平洋赤道域の海面水温は、東部で顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だった。
海洋表層の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られた。
3月の日付変更線付近の対流活動は不活発で、中部太平洋赤道域の東西風は上層で平年並、下層で東風偏差だった。また、太平洋赤道域の中部および東部の大気下層では東風偏差が広く見られた。
上記の海洋と大気の状態は、ラニーニャ現象に向かう時期の特徴を示しており、今後、中部から東部にかけての海面水温負偏差は維持または強まることが考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、春から夏にかけて基準値よりやや低い値で推移し、夏から秋にかけて基準値より1℃程度低い値を中心に推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、春から夏にかけて基準値よりやや低い値で推移し、夏から秋にかけては同程度か、さらに低い値で推移すると予測され、今後1,2か月の内にラニーニャ現象が発生する可能性が高い。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1997年1月〜2007年3月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |