●太平洋赤道域の海面水温は、東部で顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だった。海洋表層( 海面から深度数百mまでの領域)の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られた。
中部の大気下層では東風偏差が持続し、ラニーニャ現象に向かう時期の特徴を示している。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後下降し、夏から秋にかけて基準値より低い値で推移すると予測され、今後1、2 か月の内にラニーニャ現象が発生する可能性が高い。
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2007年4月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2007年4月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の4月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.5℃だった。
◆南方振動指数は+0.1だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆4月の太平洋赤道域の海面水温は、西経130度以東で平年より0.5℃以上低く、西経110度以東では平年より1℃以上低かった。一方、東経150度から東経165度にかけては+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、3月末に西経140度以東で見られた-0.5℃以下の負偏差は、4月下旬には西経110度以東で見られた。3月末に西経130度以東で見られた-1℃以下の負偏差は4月下旬に消失した。一方、3月末に東経165度付近に見られた+0.5℃以上の正偏差は、4月下旬には東経145度から東経165度にかけて見られた。
◆インド 洋赤道域の海面水温は、アフリカ沿岸から東経55度にかけて平年より0.5℃以上高かった。
◆4月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、西経160度から西経80度にかけての海面から深度160mで平年より1℃以上低かった。西経135度から西経115度にかけての深度80mから110mと、西経110度以東の深度20mから60mでは-3℃以下の負偏差が見られた。
一方、東経140度から東経165度にかけての深度50mから130mでは+1℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、3月末に西経150度以東に見られた-1℃以下の負偏差域は、4月下旬には西経130度付近と西経100度から西経80度にかけて見られた。一方、4月中旬に東経150度付近に現われた+0.5℃以上の正偏差は、4月下旬には東経160度以西で見られた。
◆4月の太平洋赤道域の対流活動は、東経155度付近で平年より活発、西経130度から西経90度にかけて不活発だった。
◆4月の日付変更線付近のOLR指数は平年並を示し、中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層では平年並、下層では東風偏差を示していた
◆4月の赤道季節内振動の東進は不明瞭だった。西経170度付近の大気下層では4月を通じて東風偏差が見られ 、一方、東経150度付近では3月下旬から4月上旬にかけて、西経110度付近では4月中旬に 、それぞれ西風偏差が見られた。
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今後の見通し(2007年5月〜2007年11月) |
4月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は先月と同じ-0.5℃だった。2月の5か月移動平均値は+0.2℃で、+0.5℃以上となった期間は2006年9月から2007年1月までの5か月間 だった。
4月の太平洋赤道域の海面水温は、東部で顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だっ た。海洋表層の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られた。4月の日付変更線付近の対流活動は平年並で、中部太平洋赤道域の東西風は上層で平年並、下層で東風偏差だった。海洋と大気のこれらの状態は、ラニーニャ現象に向かう時期の特徴を示している。
東部太平洋赤道域の大気下層では4月上旬から中旬にかけて西風偏差が見られ 、これに対応して東部の海面水温は4月中旬から下旬にかけて負偏差が弱まり、平年値に近づいた。 月下旬には東部の西風偏差は弱まり、中部で東風偏差が4月中持続したことから、今後再び東部の海面水温偏差が下降することが考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、夏から秋にかけて基準値より1℃程度低い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後下降し 、夏から秋にかけて基準値より低い値で推移すると予測され 、今後1、2か月の内にラニーニャ現象が発生する可能性が高い。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1997年1月〜2007年4月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |