●太平洋赤道域の海面水温は、東部で顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られた。
中部の大気下層では東風偏差が持続した。これらの状態は、ラニーニャ現象時の特徴を示している。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、夏から秋にかけて基準値より低い値で推移すると予測される。
現在、ラニーニャ現象が発生しているとみられ、秋まで続く可能性が高い。
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2007年5月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2007年5月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の5月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.7℃だった。
◆南方振動指数は-0.1だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆5月の太平洋赤道域の海面水温は、西経135度以東で平年より0.5℃以上低く、西経120度以東では平年より1℃以上低かった。一方、東経145度から東経170度にかけては+0.5℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、4月下旬に西経110度以東で見られた-0.5℃以下の負偏差は、西に拡がり5月中旬には西経140度以東で見られた。また、5月中旬は西経130度以東で-1℃以下の負偏差が見られた。一方、4月下旬に東経145度から東経165度にかけて見られた+0.5℃以上の正偏差は5月下旬には東経145度から日付変更線にかけて見られた。
◆インド 洋赤道域の海面水温は、アフリカ沿岸から東経90度にかけて平年より0.5℃以上高かった。
◆5月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、西経160度から西経80度にかけての海面から深度170mで平年より1℃以上低かった。西経130度から西経115度にかけての深度90m付近と、西経105度以東の深度20mから60mでは-3℃以下の負偏差が見られた。
一方、東経140度から東経165度にかけての深度50mから200mでは+1℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度260mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、3月中旬以降、西経150度以東で-1℃以下の負偏差が断続して見られた。一方、4月下旬に東経160度以西で見られた+0.5℃以上の正偏差は、東に拡がり5月下旬には西経170度以西で見られた。
◆5月の太平洋赤道域の対流活動は、西経150度付近で不活発なことを除き、ほぼ平年並だった。
◆5月の日付変更線付近のOLR指数は平年並を示し、中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層では平年並、下層では東風偏差を示していた。
◆5月の赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、月の前半は東経90度から日付変更線にかけて見られ、月の後半は西経110度から西経30度にかけて見られた。季節内振動の位相に対応して、月の前半は東経150度付近で西風偏差が、日付変更線以東では東風偏差が見られ、月の後半は東経140度付近で東風偏差が、西経120度付近で西風偏差が見られた。
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今後の見通し(2007年6月〜2007年12月) |
5月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-0.7℃だった。3月の5か月移動平均値は-0.2℃だった。
5月の太平洋赤道域の海面水温は、東部で顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だっ た。海洋表層の水温では、中部から東部にかけて顕著な負偏差が見られた。5月の日付変更線付近の対流活動は平年並で、中部太平洋赤道域の東西風は上層で平年並、下層で東風偏差だった。海洋と大気のこれらの状態は、ラニーニャ現象時の特徴を示している。
3月の中旬以降、海洋表層の水温は中部から東部にかけて顕著な負偏差が持続し、東部の海面水温の負偏差を維持しやすい状態となっている。しかしながら、今後、西部海洋表層の暖水が中部太平洋赤道域を東進し、東部海洋表層の負偏差を一時的に弱めることが考えられ、東部の海面水温負偏差の下降を弱めることが考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、夏から秋にかけて基準値より1℃から1.5℃程度低い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、夏から秋にかけて基準値より低い値で推移すると予測される。現在、ラニーニャ現象が発生しているとみられ、秋まで続く可能性が高い。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1997年1月〜2007年5月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |