●エルニーニョ監視海域の海面水温は基準値に近い値だった。太平洋赤道域の海面水温は、日付変更線付近で負偏差だったほかは、概ね平年並だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温は、中部から東部にかけて負偏差、西部で正偏差だった。
●エルニーニョ監視海域の海面水温は、冬に一時、基準値よりやや低い値となることが考えられるが、長くは持続せず、その後基準値に近い値で推移すると予測される。
今後春にかけてエルニーニョ現象あるいはラニーニャ現象が発生する可能性は低い。
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2008年11月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
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2008年11月の状況 |
◆エルニーニョ監視海域(北緯5度~南緯5度、西経150度~西経90度)の11月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.1℃だった。9月の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値は+0.2℃だった。
◆11月の南方振動指数は+1.5(速報値)だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
◆11月の太平洋赤道域の海面水温は、東経165度から西経170度にかけて平年より0.5℃以上低かった。
◆太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、10月末に西経170度付近に見られた-0.5℃以下の負偏差は、11月下旬には東経165度から西経145度にかけてみられた。また、11月上旬には西経110度から西経95度にかけて、11月下旬には西経95度付近に、それぞれ-0.5℃以下の負偏差が見られた。
◆インド洋赤道域の海面水温は、東経90度から東経100度にかけて平年より0.5℃以上高かった。
◆11月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、西経165度から西経80度にかけての海面から深度220mで平年より1℃以上低かった。西経160度から西経95度にかけての深度30mから60mでは-3℃以上の負偏差が見られた。一方、東経140度から東経155度にかけての深度80mから230mでは+1℃以上の正偏差が見られた。
◆太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、10月末に西経140度から西経100度にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、11月下旬には日付変更線から西経110度にかけてと西経90度付近に見られた。また、11月下旬には西経150度付近に-2℃以下の負偏差が見られた。
◆11月の太平洋赤道域の対流活動は、東経160度から日付変更線にかけて平年より不活発、東経130度付近で平年より活発だった。
◆11月の日付変更線付近のOLR指数は対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で顕著な西風偏差、下層で顕著な東風偏差を示していた。
◆赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、11月中旬から下旬にかけてインド洋から太平洋の西部へ東進するのが見られた。太平洋赤道域の大気下層では、11月を通じて、太平洋の西部から中部にかけて東風偏差が、東部で西風偏差が見られた。
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今後の見通し(2008年12月〜2009年6月) |
11月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-0.1℃で、9月の5か月移動平均値は+0.2℃だった。
11月の太平洋赤道域の海面水温は、日付変更線付近で負偏差だったほかは、概ね平年並だった。海洋表層の水温は、中部から東部にかけて負偏差で、西部では正偏差だった。太平洋赤道域では、日付変更線付近の対流活動は平年より不活発で、大気下層では東風偏差が見られた。
エルニーニョ監視海域の海面水温は、9月以降基準値に近い値が続いているが、今後、中部太平洋赤道域の表層水温の負偏差が東進して、東部の海面水温偏差を低下させることが考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、冬には基準値よりやや低い値で、春には基準値に近い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、冬に一時、基準値よりやや低い値となることが考えられるが、長くは持続せず、その後基準値に近い値で推移すると予測される。
今後春にかけてエルニーニョ現象あるいはラニーニャ現象が発生する可能性は低い。
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エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
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エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下・!印は速報値) (1998年1月〜2008年11月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
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気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。 |