エルニーニョ監視海域の海面水温は基準値よりやや低い値だった。太平洋赤道域の海面水温は、中部で顕著な負偏差だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温は、中部から東部にかけて顕著な負偏差、西部では正偏差だった。また、日付変更線付近の対流活動は不活発だった。これらの状態はラニーニャ現象時に見られる特徴を呈している。
エルニーニョ監視海域の海面水温は、冬には基準値よりやや低い値で、春から夏にかけて基準値に近い値で推移すると予測される。ラニーニャ現象が発生しているとみられ、冬の間持続する可能性がある。

2008年12月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
エルニーニョ監視海域(北緯5度~南緯5度、西経150度~西経90度)の12月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.6℃だった。10月の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値は0.0℃だった。
12月の南方振動指数は+1.6だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
12月の太平洋赤道域の海面水温は、東経170度から西経110度にかけて平年より0.5℃以上低く、西経175度から西経145 度と西経130度付近には-1.0℃以下の負偏差が見られた。一方、東経145度以西では+0.5℃以上の正偏差が見られた。
太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、11月末に東経165度から西経145度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は、12月下旬には東経170度から西経145度にかけてみられた。12月上旬に西経160度付近に現れた-1.0℃以下の負偏差は、12月下旬には日付変更線から西経110度に広がり、西経155度付近と西経120度付近では-1.5℃以下の負偏差が見られた。一方、12月上旬に東経140度付近に現れた+0.5℃以上の正偏差は、下旬には東経150度以西で見られた。
インド洋赤道域の海面水温は、東経40度から東経50度にかけて平年より0.5℃以上低かった。
12月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経170度から西経80度にかけての海面から深度230mで平年より1℃以上低かった。西経150度から西経125度にかけての深度60mから140mでは-5℃以下の負偏差が見られた。一方、東経140度から東経170度にかけての深度50mから260mでは+1℃以上の正偏差が見られた。
太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、11月末に日付変更線から西経105度にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、12月下旬には西経170度から西経85度にかけて見られた。また、11月末に西経150度付近に見られた-2.0℃以下の負偏差は、12月下旬には西経160度から西経110度にかけて見られた。
12月の太平洋赤道域の対流活動は、東経150度から西経170度にかけて平年より不活発だった。
12月の日付変更線付近のOLR指数(上層雲量の指標の一つ。正[負]の値は上層雲量が平年より多い[少ない]状態を示す。)は対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で顕著な西風偏差、下層で東風偏差を示していた。
赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、12月を通じてインド洋の東部からインドネシア付近にあった。12月の太平洋赤道域の大気下層では、太平洋の西部から中部にかけて東風偏差が見られた。
12月の太平洋赤道域の海面水温は、日付変更線の西側から東部にかけて負偏差で、中部の負偏差が顕著だった。西部では正偏差が見られた。海洋表層の水温は、中部から東部にかけて顕著な負偏差で、西部では正偏差だった。太平洋赤道域では、日付変更線付近の対流活動は平年より不活発で、大気下層では東風偏差が見られた。これらの状態はラニーニャ現象時に見られる特徴を呈している。
12月下旬には日付変更線から東部にかけて-1.0℃以下の海面水温の負偏差が見られたが、今後、太平洋赤道域の中部から東部にかけての表層水温の負偏差が東進することにより、東部の海面水温偏差がさらに低下することが考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、冬には基準値より低い値で、春から夏にかけては基準値に近い値で推移すると予測している
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、冬には基準値よりやや低い値で、春から夏にかけて基準値に近い値で推移すると予測される。ラニーニャ現象が発生しているとみられ、冬の間持続する可能性がある。

エルニーニョ監視海域:北緯5度~南緯5度、西経150度~90度

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1998年1月~2008年12月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。
2008年 | ||||||||||||
エルニーニョ監視指数 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
基準値との差(℃) | -1.5 | -1.4 | -0.6 | -0.3 | -0.1 | 0.0 | +0.5 | +0.6 | +0.2 | -0.2 | -0.1 | -0.6 |
5か月移動平均(℃) | -1.4 | -1.1 | -0.8 | -0.5 | -0.1 | +0.1 | +0.2 | +0.2 | +0.2 | 0.0 | ||
南方振動指数 | +1.4 | +1.8 | +1.3 | +0.6 | -0.2 | +0.5 | +0.2 | +1.0 | +1.2 | +1.6 | +1.5 | +1.6 |