2010年8月

ラニーニャ現象が発生しているとみられ、冬までは持続する可能性が高い


2010年8月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い
2010年8月の状況

8月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-1.0℃だった。6月の5か月移動平均値は-0.4℃だった。 8月の南方振動指数は+1.9だった。8月の太平洋赤道域の海面水温は、西部で顕著な正偏差、日付変更線の西側から東部にかけて顕著な負偏差だった。 太平洋赤道域の海洋表層の水温は、西部で正偏差、中部から東部にかけて顕著な負偏差だった。 太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は平年より不活発で、西部から中部にかけて大気下層の東風偏差が卓越した。 これらの状況はラニーニャ現象時の特徴を示している。

今後の見通し(2010年9月~2011年3月)

太平洋赤道域では、大気下層の東風偏差が続いたことにより中部から東部にかけての海洋表層の冷 水偏差が維持されており、今後しばらくは海面水温の負偏差が続きやすいと考えられる。

エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、今後冬にかけて基準値より低い 値で推移すると予測している。

以上のことから、ラニーニャ現象が発生しているとみられ、冬までは持続する可能性が高い。 西太平洋熱帯域の海面水温は、今後秋にかけて基準値より高い値で推移すると予測される。

西太平洋熱帯域の海面水温は、秋から冬にかけて基準値に近いかまたは基準値より高い値で推移す ると予測される

インド洋熱帯域の海面水温は、夏には基準値より高い値から基準値に近い値に推移した。秋 には基準値に近い値で推移し、その後次第に基準値より低くなると予測される。

8月の日本の平均気温は、統計を開始した1898年以降の113年間で第1位の高い記録となった。こ の要因の一つである北半球中緯度対流圏の高温に、ラニーニャ現象が一部影響していたと考えられる。 今後の日本の天候については、最新の季節予報を参照されたい。

8月の世界の天候では、ロシア西部、モーリシャス付近の異常高温、およびロシア西部の異常少雨 がラニーニャ現象時の特徴と一致していた。


エルニーニョ監視海域:北緯5度~南緯5度、西経150度~90度

各監視指数の最近10年間の経過
(2000年1月~2010年8月)
折線は月平均値、滑らかな太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。

2009年 2010年
エルニーニョ監視指数 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月
基準値との差(℃) +0.7 +0.7 +1.3 +1.4 +1.1 +0.8 +0.7 +0.6 0.0 -0.7 -0.9 -1.0
5か月移動平均(℃) +0.9 +1.0 +1.0 +1.1 +1.1 +0.9 +0.6 +0.3 -0.1 -0.4
南方振動指数 +0.3 -1.3 -0.5 -0.7 -0.9 -1.1 -0.7 +1.5 +0.9 +0.5 +1.8 +1.9
資料提供:気象庁
7月 9月