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〜早い季節の進み・季節商品の低迷・天候デリバティブの拡大 (1)〜

平沼 洋司  ( 福井地方気象台 )



2003年6月24日更新 

1. はじめに

 2002年の天候は、暖かい冬、春には桜の開花の異常な早さ、夏の猛暑、秋の早い寒さ到来など一年を通して季節の進みの早さが特徴であった。天候の概要は1月から5月頃まで全国的に高温傾向が続き、夏も本州は猛暑(北日本は8月中心に低温)、秋以降は気温の変動が大きく、11月には全国的著しい低温となった。年平均気温は全国的に高くなった。東・西日本の高温は6年連続、南西諸島は5年連続でとなった。

 一方、社会・経済はバブルがはじけて12年、戦後50年余、ずっと続いた右肩上がり経済の失速、戦後初めて経験するデフレ経済、終身雇用の崩壊など戦後築いてきた常識の多くが崩壊し、不況から抜け出せない状態が続いている。このような経済環境に天候がどのように係わっているか、2002年の天候と社会・経済との関係を見ていく。





2. 暖かい冬の影響

全国的に1月中旬から春のような暖かい陽気になった。この状態は5月まで続き社会生活に少なからぬ影響を与えた。

 暖かい冬でデパート低迷:1月から春のような暖かさとなり全国デパート(118社298店)の売上高は1、2月共に前年比マイナスとなった。1月の全国地区の売上高は7057億円で前年同月比0.7%減。協会では1月後半からの気温の高さが季節衣料などに影響を与えたとしている。2月は高めの気温で冬物衣料などは落ち込みが激しく、全国地区で5538億円で4.9%減、東京は5.7%減となった。

 初詣客の人出大幅減:警察庁の調べによると正月三が日に全国の主な神社や仏閣への初詣客は昨年より384万人少ない約8491万人で(前年比4.3%減)、これは過去10年で最低であった。これは東海・近畿地方を襲った大雪で交通手段が奪われたのと、新世紀を迎えた前年に比べイベントが少なかったのが原因とのこと。ちなみにレジャー施設やスキー場などの行楽地も前年比23.8%減の446万人であったが、出足のよい場所は東京ディズニーランドとディズニーシーは36.2万人(前年より8.2万人多い)、ユニバーサル・スタジオ(大阪)が14万人、苗場スキー場が13万人などであった。


 JR6社2%増:年末年始のJRの輸送実績(12月28〜1月6日の10日間)はグループ全体で新幹線、在来特急・急行列車の利用客数は前年度比2%増の約1029万人で2年連続で前年を上回った。ただ、東海・北陸・東北地方の大雪と、身近なレジャーを控えた人が多かったために近距離客の伸び悩みが目立った。

 暖冬で野菜暴落:野菜は秋以降の暖かい気候で生産量が増加したこと、狂牛病のあおりで肉料理の付け合せ野菜が敬遠され価格が暴落した。特に大阪では15年振りという落ち込みである。主な野菜の下落率は、ダイコン67%、白菜79%、レタス51%、ほうれん草30%などで店頭価格は約30%安となった。

 インフルエンザ患者数5.6倍:国立感染症研究所によると2002年冬のインフルエンザ患者数(保健所報告数)は73345で、報告数が多かったのは愛知県、岐阜県、三重県、静岡県など東海地方と北関東。学校欠席者数の累計は流行の少なかった前年の5.6倍であった。

 石油需要減少:景気低迷と暖冬で石油の需要が落ち込んだ。石油元売り4社の3月期決算は暖冬の影響で灯油需要が減少、産業用の軽油、C重油も景気低迷で減少した。


3. 変動の大きい春の影響

記録的な暖春により社会的な影響が大きい2002年の春であった。その第一が早すぎる桜の開花と各地の桜イベントの中止などで、新聞でも「桜散り、客ソッポ」「気温上昇特需、景気に光明」などの見出しが躍った。また、「春の使者?黄砂」が観測開始以来最も多く観測され航空機などに影響がでたのも特徴であった。

 困った桜の早咲き:3月の全国各地の気温は東京で3.3度平年を上回るなど全国149の観測所の3分の2に近い95ヶ所で観測史上最も高かった影響で、各地の桜イベントなどに大きな影響がでた。特に東北地方では例年4月末からの大型連休と桜が一緒になるが、今年は桜が終わってしまい「弘前さくら祭り」は前年の約70%減(77万人減)となるなど主な観光地の大型連休の人出は561万人で前年より127万人も少なく18.5%減となった。

 黄砂猛威:中国大陸の黄土高原やゴビ砂漠から飛来してくる黄砂が1967年以降最も多く1276日となった(全国123気象官署で観測された延べ日数の合計で表示)。2001年の856日、2000年の748日とここ3年増加している。2002年の特徴は西日本や日本海側に加えて北日本、特に北海道で観測されていることである。この影響は航空機の発着に大きく、福岡空港では4月8日には黄砂による天候不良で欠航や到着地変更など80便に影響が出た。

GW休暇平均7.3日:厚生労働省によると主要企業1330社のGW(ゴールデンウイーク)連続休暇は前年と同様の平均7.3日であった。これは調査を始めた1986年以来1996年の7.6日に次いで長い休暇である。連続休暇の実施は調査事業所の85.6%の企業で、最長は14日間、7日以上の連続休暇は22.9%であった。

 GWの人出減少で6171万人:警察庁によるとGW期間(4月27〜5月6日)の全国の主要行楽地の人出は桜の記録的な早咲きなどの異常気象で観光行事に大きく影響を与え昨年より212万人減少した。最も人出が多かったのは「博多どんたく」の約180万人で前年より30万人減、これは天候不順のため、次いで「広島フラワーフェステバル」約135.2万人(同5.8万人減)、TDL(東京ディズニーランド)は77.5万人で前年より21.6万人増などであった。

 GWのJR利用は2%減:JR旅客6社がまとめたGWの主要50区間の新幹線や特急の利用者は(4月26日〜5月6日)は計1031万人で前年を2%減であった。東北地方の桜の見ごろが早まったころから東北新幹線が7%減などが響いた。一方、航空3社のまとめでは、国際線利用が23万人で前年比7.6%減少、国内線は約258万人で前年比4.4%減となった。また、交通量は1日約747万台で約1.5%減で、10km以上の渋滞回数は前年より9回減少し218回であった。

 ビール出荷4月は堅調:暖春の影響でビールの売り上は健闘した。特に4月は前年を0.5%上回った。各社大型連休も一部休日返上で生産を続けた。各月のビール出荷(発泡酒を含)は3月54.8万klで前年比3.4%減、5月3.0%減であった。なお、発泡酒の割合は3月39.4%、4月36.5%、5月39.5%であった。

 春のエアコン伸び悩む:春はその年のエアコン売り上げの前哨戦といわれている。日本冷凍空調工業会によると3月の出荷は約85万台と前年比6.8%減、4月は約52万台で5.3%減、5月は約78万台で7.2%減と前年の伸びがよかった影響で伸び悩んだ。

 デパート3月好調:3月のデパート商戦は暖かさの影響で春物だけでなく夏物も売れて好調であったが、5月は天候不順で季節物が悪く低調になった。3月の全国地区デパートは約7517億円で前年比 0.6%増であったが、東京地区は0.6%減。4月は季節商品が悪く全国地区の売り上げ高は約6612億円で前年比2.5%減、東京地区は4.8%減。5月も天候不順で全国地区売り上げは約6526億円で前年比2.1%減、東京地区は前年比2.3%減。

 コンビニ商戦落込む:天気が商品売り上げに影響を及ぼすときは値段のより安いものほどその効果は大きい。アイスクリームや清涼飲料はその典型である。春になり暖かくなるとこれらが主力商品であるコンビニは忙しくなるはずであるが、暖春の2002年は全般に客単価の落ち込みで前年比は減少した。3月は5742億円で既存店ベースで0.4%減。4月は5519億円でやはり客単価が伸びず1.9%減。5月は5735億円で1.8%の減少となった。

 電力減収・都市ガス増収:電力10社の3月の決算は暖春という天候不順で冷暖房需要と景気低迷で産業用の大口需要減で、売上高は関西と九州を除いて落ち込んだ。東京0.7%減、中部1.1%減、東北1.1%減など。一方、3月の都市ガス大手4社の決算は暖冬の影響で家庭向けと産業用需要は減少したが、東電の火力発電向け需要で販売量が増加した。

2002年の天候と商品の関係
冬 [暖冬]
商品 前年比(%) 特徴とコメント
デパート低迷 ▼0.7 1月暖冬が響く、2月▼4.9
正月人出大幅減 8491万人 大雪などで前年より384万人少ない。過去10年で最低
レジャー施設 ▼23.8% 降雪など影響。446万人
JR6社旅客数微増 2.0 1029万人。東海・北陸・東北の雪が影響
野菜暴落 30%安 暖冬で早い生育。狂牛病の影響も
インフルエンザ 5.6倍 学校欠席者数の累計は前年の5.6倍
石油需要減
暖冬のため

春 [暖春]
商品 前年比(%) 特徴とコメント
GW休暇7.3日 前年と同じ 1330社平均、最長14日
連休人出減少 212万人減 早い春の訪れのため減少6171万人
GWのJR利用微減 ▼2.0% 東北地方など桜が終わって7%減少
ビール4月健闘 0.5%(4月) 3月は3.4%減、5月は3.0%減。発泡酒は大幅伸びる
春のエアコン伸び悩み ▼7.7%(5月) 3月6.8%減、4月5.3%減、前年が大幅伸びのため減少
3月デパート伸びる 0.6%(3月) 暖かい春だが4,5月季節商品伸び悩み 4月▼2.5%、5月▼2.1%
電力3月減収 ▼0.7%(東京) 暖春で売れず東北、中部電力も(▼1.1%)
コンビニ落ち込む ▼0.4(3月) 4月▼1.9%減、5月▼1.8%減
黄砂猛威 1116日 航空機の欠航や到着変更など被害

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