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2002年8月29日更新

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岩波新書46
『雷』


著者・中谷宇吉郎
発行所・株式会社岩波書店
初版・1939年9月29日


【本文より引用】
「たとへば、強い電光がとんだ後に、大きい光の球が雷雲から出て来て、空を舞ひ歩いたとか、数人の人が路上にゐたら、その真中へはひつて来て爆発したとか、もつとひどい話になると、開けてあつた窓からその火の球がはひつて来て、卓を囲んで話をしてゐた一家の人々の頭の上を一廻りして、又窓から出て行つたといふような記録さへある。」
(P73「色々な電光の話」より)

雪の神様、日本の雪氷学の草分け中谷宇吉郎。その幾多の著書の中から高名な学者の一端をかいまみようとして、今回はこの著書「雷」をのぞいてみた。
巻頭には図版もあり、興味深い目次が並んでいる。ちょうど猛暑の真っ最中でもあり、怪談話にうってつけの「球電」を紹介させていただく。
心霊学や怪談話と中谷先生の物理学とがない混ざって、ゾッとするような、恐ろしくも楽しい読み物ではないですか。
図書館に行けば、「保存図書」に扱われている、世にも貴重な文献である。かな遣いが「はひつて(はいって)」とか「ゐたら(いたら)」などとあるのも、クラシカルな華麗さを感じさせる。
運良くめぐり逢えたら、是非ご一読を。

中谷宇吉郎は雪の研究でつとに有名ですが、本書は、寺田寅彦門下で電気火花の実験に従事していた当時、海外の研究者の文献を多数読んだことをきっかけに生まれました。
自然現象の奥深さを一般の人にもわかってもらおうと書き下ろした随筆集で、雷の歴史や言い伝えもふんだんに盛り込まれています。

「気象人」の読者、うきすけさん(滋賀県)のリクエストにお答えしたつもりです。いかがでしょうか。またのご要望などお待ちしています。ありがとうございました。(森田正光)


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