2002年10月25日更新
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【予想される天候】
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冬(12 〜2月)平均気温は北日本で平年並の可能性が最も大きく、その確率は50%です。東日本、西日本、南西諸島では高い可能性が最も大きく、その確率は50%です。
11月
天気は数日の周期で変わるでしょう。気温、降水量ともに全国で平年並でしょう。
12〜3月
冬型の気圧配置は長続きしないでしょう。一時北日本を中心に強い寒気の南下があるでしょう。
日本海側の地方では平年と同様に曇りや雪または雨の日が多いでしょう。太平洋側では、平年に比べ曇りや雨または雪の日が多いでしょう。南西諸島では、平年同様に曇りや雨の日が多いでしょう。
冬(12〜2月)平均気温は、北日本では平年並の可能性が、東日本、西日本、南西諸島では高い可能性が大きいでしょう。日本海側の降雪量は北日本で平年並、東日本、西日本では少ないでしょう。
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冬(12〜2)月平均気温の予想される各階級の確率(%)
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2002年10月10日 気象庁 気候・海洋気象部発表
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【解説】
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最近10 年の冬(12〜2月)の天候
気温の階級は −:低い 0 :平年並 +:高い *はかなり低い(高い)。
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最近の冬(12〜2月)の天候
冬平均気温は1980年代終わりから高温傾向が続いている。この高温傾向は1990 年代初めが高極で、その後北日本を中心にやや弱まってきている一方、南西諸島では逆に高温傾向が最近顕著となった。
最近10年間の冬平均気温は、各地域とも、低温となったのは1年しかない。「平年並」と「高い」の出現頻度はほぼ同じとなっている。予報区でみると沖縄では低温となった年は無い。最近10 年間の日本海側の冬降雪量は北陸から山陰にかけて少ない傾向が顕著である。
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北半球中緯度の高温傾向
全球平均の850hPaと300hPaの高度差(層厚を温度に換算した量(層厚換算温度)は、おおよそ対流圏の平均温度とみなすことができる。対流圏温度の変動はエルニーニョ南方振動(ENSO)との関係が深く、太平洋赤道域東部の海面水温が上昇すると約半年程度の遅れをもって上昇することが知られている。
全球平均層厚換算温度は1998年秋から2000年春まで断続したラニーニャ現象に伴い一時負偏差となったが、2000年後半から上昇傾向にあり、2002 年以降も大きな正偏差を維持している。今後エルニーニョ現象の進行とともにこの対流圏温度も上昇傾向となると考えられる。
また、北半球中緯度(30-50°N )の層厚換算温度偏差は、2000年後半に一時的に負となったものの、2001年以降は正偏差が持続している。全国平均地上気温平年偏差の変動は、北半球中緯度の層厚換算温度偏差と良く連動していて、1998年をピークとした気温の高い状態は現在も継続している。
全球平均および北半球中緯度層厚換算温度の高い状況は、今後も続くと考えられ、今冬も持続的な寒気の南下の可能性は小さいとみられる。
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最近の冬の北半球循環場の特徴
日本の冬の気温変動に大きく影響する北半球循環場の卓越パターンと、このパターンの強さを示す指数の時系列を図2に示す。この指数が正の値の場合、北極付近など高緯度側で高度が負偏差、日本付近など中緯度の高度は正偏差となる傾向があり、日本に寒気が入りにくい。これとは逆に指数が負の場合は高緯度で正偏差、日本付近など中緯度で負偏差となりやすく、日本に寒気が入りやすい。このため、この卓越パターンの変動と日本の冬平均気温には正の相関関係があり、指数が正の場合は冬平均気温は高く、負の場合は気温が低い傾向がある。この傾向は北日本ほど明瞭である。
この指数は長期的には上昇傾向があるものの、10数年程度の周期変動に着目すると最近数年は平年並を中心に変動している。従って、今冬においても北日本を中心に一時的に寒気の影響を受ける可能性がある。
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太平洋熱帯域の状況とエルニーニョ時の冬の天候の特徴
2000 年春にラニーニャ現象が終息した後、海面水温の基準値からの差は徐々に増加し、2002 年2月以降に正の値となった。5月以降は+0.5 ℃以上の正の値が現在まで持続していて、現在エルニーニョ現象が本格化していると判断される。(→海況・エルニーニョ参照)。また、この状態は少なくとも今冬いっぱいは持続すると考えられ、今冬は基本的にエルニーニョ現象時の天候の特徴が現れる可能性が大きい。
1949 年以降で冬にエルニーニョ現象であった13年の冬平均気温、冬降水量の階級を図3に示した。冬平均気温は北日本で「平年並〜低い」、東日本以西では「平年並〜高い」場合が多くなっている。また、冬降水量は太平洋側および南西諸島で「平年並〜多い」特徴が見られる。
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まとめ
最近10 年では冬平均気温が低くなることがほとんどないこと、北半球対流圏の気温が高い傾向を維持していることから、基本的に今冬の気温は高くなる可能性が大きい。さらに、現在エルニーニョ現象が本格化していて、エルニーニョ現象時の天候の特徴からは北日本を除き「平年並〜暖冬」が予想される。
一方、近年寒気の南下の程度は平年並付近で変動していて、特に北日本ではその影響を受けやすくなっている。また、北日本ではエルニーニョ時の「平年並〜暖冬」傾向が見られない。さらに、各種統計資料からは他地域に比べ高温を示唆する資料が少ないことから、北日本は「平年並」となる可能性が大きいと予想される。
なお、北半球循環場、熱帯域海面水温の実況の推移等を注意深く監視し、必要に応じ予報を見直すことにしている。
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図1:冬(12〜2月)平均気温平年差の経年変化
細線:冬平均気温 太線:5年移動平均
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図2:冬の気温変動に大きく影響する北半球循環場の卓越パターン
冬(12 〜2 月)の月平均北半球500hPa 高度場の第1 主成分
下はパターンの強さを示す指数の時系列 太線:5年移動平均
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図3:冬にエルニーニョ現象が発現していた年の
冬平均気温(左)、冬降水量(右)の階級頻度
1949年以降の13例の統計
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資料提供:気象庁 |