太平洋赤道域の海面水温は、中部で顕著な負偏差、西部では正偏差だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温は、中部から東部にかけて顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だった。日付変更線付近の対流活動は不活発だった。これらの状態はラニーニャ現象時に見られる特徴を呈している。
エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後春にかけて基準値に近づくと予測される。ラニーニャ現象は春にかけて終息に向かう見込みである。

2009年1月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
エルニーニョ監視海域(北緯5度~南緯5度、西経150度~西経90度)の1月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.5℃だった。11月の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値は-0.2℃だった。
1月の南方振動指数は+0.8だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
1月の太平洋赤道域の海面水温は、東経170度から西経115度にかけて平年より0.5℃以上低く、日付変更線から西経125度にかけて-1.0℃以下の負偏差が見られた。一方、東経150度以西では+0.5℃以上の正偏差が見られた。
太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、12月末に東経170度から西経90度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は、1月下旬には東経170度から西経120度にかけてみられた。12月末に日付変更線から西経110度付近にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、1月下旬には日付変更線から西経150度にかけて見られた。一方、東経150度以西では1月を通じて+0.5℃以上の正偏差が見られた。また、1月下旬には西経110度から西経80度にかけて+0.5度以上の正偏差が見られた。
1月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経170度から西経80度にかけての海面から深度200mで平年より1℃以上低かった。西経140度から西経110度にかけての深度30mから100mでは-5℃以下の負偏差が見られた。一方、東経140度から西経170度にかけての深度20mから270mでは+1℃以上の正偏差が見られ、東経140度から東経175度にかけての深度100mから180mでは+3℃以上の正偏差が見られた。
太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、12月末に西経170度から西経90度にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、1月下旬には西経150度から西経85度にかけて見られた。12月末に西経155度から西経110度にかけて見られた-2℃以下の負偏差は、1月下旬には西経135度付近に見られた。一方、12月末に東経165度以西で見られた+1℃以上の正偏差は、1月下旬には東経170度以西で見られた。
1月の太平洋赤道域の対流活動は、東経165度から西経165度にかけて平年より不活発だった。
1月の日付変更線付近のOLR指数(上層雲量の指標の一つ。正[負]の値は上層雲量が平年より多い[少ない]状態を示す。)は対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で西風偏差、下層で東風偏差を示していた。
赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、1月中旬から下旬にかけて、太平洋の東部からインドネシア付近へ東進していた。1月の太平洋赤道域の大気下層では、太平洋の西部から中部にかけて東風偏差が見られた。東部では上旬から中旬にかけて西風偏差が見られた。
1月の太平洋赤道域の海面水温は、中部で顕著な負偏差だった。西部では正偏差が見られた。海洋表層の水温は、中部から東部にかけて顕著な負偏差で、西部では顕著な正偏差だった。太平洋赤道域では、日付変更線付近の対流活動は平年より不活発で、大気下層では東風偏差が見られた。これらの状態はラニーニャ現象時に見られる特徴を呈している。
12月下旬から1月上旬にかけては中部から東部にかけて海面水温の負偏差が見られたが、1月中旬には西風偏差の影響で東部の海面水温が正偏差に転じた。今後、太平洋赤道域の中部から東部にかけての表層水温の負偏差が東進することにより、東部の海面水温偏差が再び低下することが考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差が、春には次第に0に近づき、夏には正に転じると予測している
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後春にかけて基準値に近づくと予測される。ラニーニャ現象は春にかけて終息に向かう見込みである。

エルニーニョ監視海域:北緯5度~南緯5度、西経150度~90度

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1999年1月~2009年1月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。
2008年 | 2009 | |||||||||||
エルニーニョ監視指数 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 |
基準値との差(℃) | -1.4 | -0.6 | -0.3 | -0.1 | 0.0 | +0.5 | +0.6 | +0.2 | -0.2 | -0.1 | -0.6 | -0.5 |
5か月移動平均(℃) | -1.1 | -0.8 | -0.5 | -0.1 | +0.1 | +0.2 | +0.2 | +0.2 | 0.0 | -0.2 | ||
南方振動指数 | +1.8 | +1.3 | +0.6 | -0.2 | +0.5 | +0.2 | +1.0 | +1.2 | +1.6 | +1.5 | +1.6 | +0.8 |