2009年2月

太平洋赤道域の海面水温は、中部から東部にかけて負偏差、西部では正偏差だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温は、東部で顕著な負偏差、西部で顕著な正偏差だった。日付変更線付近の対流活動は不活発だった。これらの状態はラニーニャ現象時に見られる特徴を呈している

エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後春から夏の初めにかけて基準値に近づくと予測される。ラニーニャ現象は春に終息に向かう見込みである。


2009年2月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い
2009年2月の状況

エルニーニョ監視海域(北緯5度~南緯5度、西経150度~西経90度)の2月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.6℃だった。12月の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値は-0.4℃だった。

2月の南方振動指数は+1.3だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)

2月の太平洋赤道域の海面水温は、東経165度から西経105度にかけて平年より0.5℃以上低く、東経170度から西経160度にかけて-1.0℃以下の負偏差が見られた。一方、東経145度以西では+0.5℃以上の正偏差が見られた。

太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、1月末に東経170度から西経120度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は、2月下旬には東経165度から西経100度にかけてみられた。1月末に日付変更線から西経150度付近にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、2月下旬には東経175度から西経170度にかけてと西経120度付近で見られた。一方、1月下旬に東経150度以西に見られた+0.5度以上の正偏差は、2月下旬には消滅した。

2月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経170度から西経80度にかけての海面から深度160mで平年より1℃以上低かった。西経120度から西経80度にかけての深度10mから90mでは-3℃以下の負偏差が見られた。一方、東経140度から西経170度にかけての深度30mから260mでは+1℃以上の正偏差が見られ、東経140度から東経170度にかけての深度80mから180mでは+3℃以上の正偏差が見られた。

太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、1月末に西経145度から西経85度にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、2月下旬には西経120度から西経80度にかけて見られた。一方、東経170度以西では、2月を通じて+1℃以上の正偏差が見られた。

2月の太平洋赤道域の対流活動は、東経135度から東経150度にかけて平年より活発、東経165度から西経165度にかけて平年より不活発だった。

2月の日付変更線付近のOLR指数(上層雲量の指標の一つ。正[負]の値は上層雲量が平年より多い[少ない]状態を示す。)は顕著な対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で西風偏差、下層で東風偏差を示していた。

赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、2月上旬には太平洋の西部に、中旬には西経60度付近、下旬にはインドネシア付近で見られた。2月の太平洋赤道域の大気下層では、太平洋の西部から中部にかけて東風偏差が見られた。

今後の見通し(2009年3月~2009年9月)

2月の太平洋赤道域の海面水温は、中部から東部にかけて負偏差だった。西部では正偏差が見られた。海洋表層の水温は、東部で顕著な負偏差、西部では顕著な正偏差だった。太平洋赤道域では、日付変更線付近の対流活動は平年より不活発で、大気下層では東風偏差が見られた。これらの状態はラニーニャ現象時に見られる特徴を呈している

12月から中部を中心とした海面水温の負偏差が持続し、大気下層の東風偏差により、中部から東部にかけての表層水温の負偏差が維持されている。大気と海洋の相互作用により維持されやすい状態となっていることから、今後1、2か月は大平洋赤道域の東部から中部にかけての海面水温負偏差が持続することが考えられる

エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、春から夏の初めにかけて次第に基準値に近づき、夏の間は概ね基準値に近い値で推移すると予測している。

以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後春から夏の初めにかけて基準値に近づくと予測される。ラニーニャ現象は春に終息に向かう見込みである。


エルニーニョ監視海域:北緯5度~南緯5度、西経150度~90度

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1999年1月~2009年2月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。

2008年 2009
エルニーニョ監視指数 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月
基準値との差(℃) -0.6 -0.3 -0.1 0.0 +0.5 +0.6 +0.2 -0.2 -0.1 -0.6 -0.5 -0.6
5か月移動平均(℃) -0.8 -0.5 -0.1 +0.1 +0.2 +0.2 +0.2 0.0 -0.2 -0.4
南方振動指数 +1.3 +0.6 -0.2 +0.5 +0.2 +1.0 +1.2 +1.6 +1.5 +1.6 +0.8 +1.3
資料提供:気象庁
1月 3月