2009年3月

太平洋赤道域の海面水温は、東部で負偏差が顕著だった。中部の負偏差は前月より弱まった。 海洋表層の水温は、中部から東部にかけての負偏差が前月より弱まり、西部の正偏差は持続した。ラニーニャ現象は持続しているが、弱まる兆候が見られる

エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後基準値に近づき、夏には基準値に近い値で推移すると予測される。ラニーニャ現象は春のうちに終息する可能性が高い


2009年3月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い
2009年3月の状況

エルニーニョ監視海域(北緯5度~南緯5度、西経150度~西経90度)の3月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.6℃だった。1月の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値は-0.5℃だった。

3月の南方振動指数は+0.3だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)

3月の太平洋赤道域の海面水温は、東経165度以東で平年より0.5℃以上低く、西経135度から西経100度にかけて-1℃以下の負偏差が見られた。一方、東経135度以西では+0.5℃以上の正偏差が見られた。

太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、2月末に東経160度から西経105度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は、3月下旬には西経155度から西経110度にかけてみられた。2月末に東経170度から西経170度付近にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、3月上旬に消滅した。3月上旬に西経115度付近に-1℃以下の負偏差が現われ、下旬には西経135度から西経115度にかけて見られた。

3月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、西経145度から西経80度にかけての海面から深度140mで平年より1℃以上低かった。西経110度から西経85度にかけての深度10mから80mでは-3℃以下の負偏差が見られた。一方、東経140度から西経170度にかけての深度50mから250mでは+1℃以上の正偏差が見られ、東経140度から東経175度にかけての深度110mから180mでは+3℃以上の正偏差が見られた。

太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、2月末に西経125度から西経85度にかけて見られた-1℃以下の負偏差は、3月下旬には西経100度から西経90度にかけて見られた。一方、2月末に東経165度以西で見られた+1℃以上の正偏差は、3月下旬には東経175度以西で見られた。

3月の太平洋赤道域の対流活動は、東経135度から東経150度にかけて平年より活発、東経160度から日付変更線にかけて平年より不活発だった。

3月の日付変更線付近のOLR指数(上層雲量の指標の一つ。正[負]の値は上層雲量が平年より多い[少ない]状態を示す。)は顕著な対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で顕著な西風偏差、下層で東風偏差を示していた。

赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、3月上旬から中旬にはインドネシア付近に、下旬には南米付近で見られた。太平洋赤道域の大気下層では、3月上旬から中旬には日付変更線付近で東風偏差が、中旬から下旬には西部と東部で西風偏差がそれぞれ見られた。

今後の見通し(2009年4月~2009年10月)

3月の太平洋赤道域の海面水温は、東部で負偏差が顕著だった。中部の負偏差は前月より弱まった。東部の負偏差は3月上旬に一時強まり、その後、次第に弱まった。海洋表層の水温では、西部の正偏差が持続したが、中部から東部にかけての負偏差は前月より弱まった。ラニーニャ現象は持続しているが、弱まる兆候が見られる

今後、西部の暖水の東進に伴って、海面水温負偏差域がさらに縮小することが考えられる。

エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、予測期間中、基準値に近い値で推移すると予測している

以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後基準値に近づき、夏には基準値に近い値で推移すると予測される。ラニーニャ現象は春のうちに終息する可能性が高い


エルニーニョ監視海域:北緯5度~南緯5度、西経150度~90度

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1999年1月~2009年3月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。

2008年 2009
エルニーニョ監視指数 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
基準値との差(℃) -0.3 -0.1 0.0 +0.5 +0.6 +0.2 -0.2 -0.1 -0.6 -0.5 -0.6 -0.6
5か月移動平均(℃) -0.5 -0.1 +0.1 +0.2 +0.2 +0.2 0.0 -0.2 -0.4 -0.5
南方振動指数 +0.6 -0.2 +0.5 +0.2 +1.0 +1.2 +1.6 +1.5 +1.6 +0.8 +1.3 +0.3
資料提供:気象庁
2月 4月