太平洋赤道域の海面水温は、中部から東部にかけての負偏差が解消し、ほぼ平年並だった。西部では正偏差が見られた。海洋におけるラニーニャ現象の特徴はほぼ解消し、ラニーニャ現象は終息したとみられる。
エルニーニョ監視海域の海面水温は、夏から秋にかけて基準値に近い値かやや高めで推移すると予測される。夏にラニーニャ現象またはエルニーニョ現象の発生する可能性は低い。

2009年4月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の4月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は-0.1℃だった。2月の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値は-0.5℃だった。
4月の南方振動指数は+0.9だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
4月の太平洋赤道域の海面水温は、中部で平年並、西経100度付近と東経150度以西で平年より0.5℃以上高かった。
太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、4月末に西経155度から西経110度にかけて見られた-0.5℃以下の負偏差は4月中旬に消滅した。4月上旬の西経95度付近と3月末から4月下旬にかけての東経160度以西で+0.5℃以上の正偏差が見られた。
4月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、東経140度から西経130度にかけての深度70mから230mでは+1℃以上の正偏差が見られ、東経150度から東経170度にかけての深度120mから170mでは、+3℃以上の正偏差が見られた
太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、3月末に日付変更線以西で見られた+1℃以上の正偏差は、4月下旬には東経160度以西で見られ、東部の負偏差はほぼ解消した。
4月の太平洋赤道域の対流活動は、インドネシア付近を除きやや不活発だった。
4月の日付変更線付近のOLR指数(上層雲量の指標の一つ。正[負]の値は上層雲量が平年より多い[少ない]状態を示す。)は対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で西風偏差、下層で東風偏差を示していた。
赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、4月上旬には大西洋からインド洋に、中旬にはインドネシア付近に、下旬には太平洋の中部から東部にかけて見られた。太平洋赤道域の大気下層では、4月上旬と中旬には日付変更線の西側から中部にかけて東風偏差が見られ、中旬と下旬には西部で西風偏差が見られた。
4月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-0.1℃で、2月の5か月移動平均値は-0.5℃だった。4月の太平洋赤道域の海面水温は、中部から東部にかけて負偏差が解消し、ほぼ平年並だった。西部では正偏差だった。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温は、西部から中部にかけて正偏差だった。海洋におけるラニーニャ現象の特徴はほぼ解消し、ラニーニャ現象は終息したとみられる。
今後、西部から中部における暖水の東進に伴って、東部の海洋表層水温が正偏差に転じ、海面水温がやや高めに推移していくことが考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、夏には基準値に近い値で、秋には基準値に近い値か、あるいは、やや高い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、夏から秋にかけて基準値に近い値かやや高めで推移すると予測される。夏にラニーニャ現象またはエルニーニョ現象の発生する可能性は低い。

エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1999年1月〜2009年4月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。
2008年 | 2009年 | |||||||||||
エルニーニョ監視指数 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 |
基準値との差(℃) | -0.1 | 0.0 | +0.5 | +0.6 | +0.2 | -0.2 | -0.1 | -0.6 | -0.5 | -0.6 | -0.6 | -0.1 |
5か月移動平均(℃) | -0.1 | +0.1 | +0.2 | +0.2 | +0.2 | 0.0 | -0.2 | -0.4 | -0.5 | -0.5 | ||
南方振動指数 | -0.2 | +0.5 | +0.2 | +1.0 | +1.2 | +1.6 | +1.5 | +1.6 | +0.8 | +1.3 | +0.3 | +0.9 |