太平洋赤道域の海面水温は、西部と東部で正偏差が見られた。海洋表層(海面から深度数百mまでの領域)の水温は、太平洋赤道域のほぼ全域で正偏差だった。
エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後次第に基準値より高くなると予測される。夏のうちにエルニーニョ現象が発生する可能性が高い。

2009年5月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
エルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度)の5月の海面水温の基準値(前年までの30年間の平均値)との差は+0.4℃だった。3月の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値は-0.3℃だった。
5月の南方振動指数は-0.5だった。(貿易風の強さの目安。正の値は貿易風が強いことを示す。)
5月の太平洋赤道域の海面水温は、東経135度から東経170度にかけてと西経120度から西経95度にかけて平年より0.5℃以上高かった。
太平洋の赤道に沿った海面水温平年偏差の経度-時間断面図によると、5月月上旬に東経160度付近に現われた+0.5℃以上の正偏差は、5月下旬には西経175度以西で見られた。また、5月上旬に西経100度付近に現われた+0.5℃以上の正偏差は、5月下旬には西経125度から西経90度にかけて見られた。
インド洋赤道域の海面水温は、東経55度からインドネシア付近にかけて+0.5℃以上の正偏差だった。
5月の太平洋の赤道に沿った表層(海面から深度数百mまでの領域)水温は、西経90度以西の深度20mから230mでは+1℃以上の正偏差が見られた。東経140度から西経175度にかけての深度100mから200mと、西経145度から西経125度にかけての深度70mから120mでは、+2℃以上の正偏差が見られた。
太平洋の赤道に沿った海面から深度300mまでの平均水温平年偏差の経度-時間断面図によると、4月末に東経165度以西で見られた+1℃以上の正偏差は、5月下旬には東経145度から東経160度にかけて見られた。
5月の太平洋赤道域の対流活動は、日付変更線付近で不活発だった。
5月の日付変更線付近のOLR指数は対流不活発を示していた。中部太平洋の赤道東西風指数は、大気の上層で東風偏差、下層で平年並を示していた。
赤道季節内振動の対流活動の活発な位相は、5月上旬から中旬にかけて大西洋から太平洋西部まで東進したが、振幅は小さく、下旬には東進も不明瞭となった。太平洋赤道域の大気下層では顕著な東西風偏差は見られなかった。
5月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は+0.4℃で、3月の5か月移動平均値は-0.3℃だった。5月の太平洋赤道域の海面水温は、西部と東部で正偏差が見られた。中部では平年並だった。海洋表層海面から深度数百mまでの領域の水温は、太平洋赤道域のほぼ全域で正偏差だった。
太平洋赤道域全体で暖水の蓄積が見られることから、当面、東部の海面水温の正偏差が維持されやすい状態が続くと考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が、予測期間中、基準値より高い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ監視海域の海面水温は、今後次第に基準値より高くなると予測され る。夏のうちにエルニーニョ現象が発生する可能性が高い。。

エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度

エルニーニョ監視海域の月平均海面水温の基準値との差(上)と南方振動指数(下)
(1999年1月〜2009年5月)
太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。
2008年 | 2009年 | |||||||||||
エルニーニョ監視指数 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 |
基準値との差(℃) | 0.0 | +0.5 | +0.6 | +0.2 | -0.2 | -0.1 | -0.6 | -0.5 | -0.6 | -0.6 | -0.1 | +0.4 |
5か月移動平均(℃) | +0.1 | +0.2 | +0.2 | +0.2 | 0.0 | -0.2 | -0.4 | -0.5 | -0.5 | -0.3 | ||
南方振動指数 | +0.5 | +0.2 | +1.0 | +1.2 | +1.6 | +1.5 | +1.6 | +0.8 | +1.3 | +0.3 | +0.9 | -0.5 |