エルニーニョ現象は春に終息したとみられる。今後秋にかけてラニーニャ現象が発生する可能性がある。
インド洋熱帯域の海面水温は、夏には基準値より高い値で、秋には基準値に近い値で 推移すると予測される。

2010年5月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上 (下)青:平年より低い
2010年5月の状況
5月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は0.0℃だった。3月の5か月移動平均値は+0.6℃だった。南方振動指数は+0.9だった。5月の太平洋赤道域の海面水温は、西部で正偏差、中部で負偏差だった。太平洋赤道域の海洋表層の水温では、中部から東部にかけて負偏差が見られた。太平洋赤道域の日付変更線付近の対流活動は平年より不活発で、大気下層の東西風は西部から中部にかけて5月中概ね東風偏差が卓越した。
今後の見通し(2010年6月〜2010年12月)
太平洋赤道域では、東風偏差に対応して中部で冷水の蓄積が見られ、今後この冷水の東進に伴って海面水温負偏差が東部へ広がっていくと考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、、エルニーニョ監視海域の海面水温が、夏以降、基準値より低い値で推移すると予測している。
以上のことから、エルニーニョ現象は春に終息したとみられる。今後秋にかけてラニーニャ現象が発生する可能性がある。
西太平洋熱帯域の海面水温は、夏から秋にかけて概ね基準値に近い値で推移すると予測される。
インド洋熱帯域の海面水温は、冬から春にかけて基準値より高い値で推移している。夏には基準値より高い値で、秋には基準値に近い値で推移すると予測される。
5月の日本の天候には、インド洋熱帯域の高温の影響は明瞭には見られなかった。今後の日本の天候については、最新の季節予報を参照されたい。
4月の世界の天候では、インドシナ半島周辺とインド西部の高温がインド洋熱帯域の高温時の特徴と一致していた。

エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度

各監視指数の最近10年間の経過
(2000年1月〜2010年5月)
折線は月平均値、滑らかな太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。
2009年 | 2010年 | |||||||||||
エルニーニョ監視指数 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 |
基準値との差(℃) | +0.7 | +0.9 | +0.8 | +0.7 | +0.7 | +1.3 | +1.4 | +1.1 | +0.8 | +0.7 | +0.6 | 0.0 |
5か月移動平均(℃) | +0.5 | +0.7 | +0.8 | +0.9 | +1.0 | +1.0 | +1.1 | +1.1 | +0.9 | +0.6 | ||
南方振動指数 | 0.0 | +0.2 | -0.3 | +0.3 | -1.3 | -0.5 | -0.7 | -0.9 | -1.1 | -0.7 | +1.5 | +0.9 |
資料提供:気象庁