2011年3月

昨年夏から発生していたラニーニャ現象は春のうちに終息し、夏は平常の状態が続く 可能性が高い


2011年3月の海面水温(上)と平年偏差(下)
(上)赤:28℃以上  (下)青:平年より低い
2011年3月の状況

3月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-0.7℃だった。1月の5か月移動平均 値は-1.2℃だった。3月の南方振動指数は+2.0だった。3月の太平洋赤道域の海面水温 は、中部で顕著な負偏差、インドネシア付近では正偏差だった。太平洋赤道域の海洋表 層の水温は、西部から中部にかけて正偏差だった。海面から深度300mまでの平均水温に見ら れた東部の負偏差は縮小し、3月の下旬にはほぼ全域で正偏差となった。太平洋赤道域の大気 下層では、西部から中部にかけて東風偏差が見られた。このようにラニーニャ現象が持続して いるが、弱まりつつある。

今後の見通し(2011年4月〜2011年10月)

太平洋赤道域の西部から中部にかけての海洋表層の暖水が、今後さらに東進すれば東部の海面水温 負偏差を弱めることが考えられる。

エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が春のうちに基準値に近づき、その 後基準値に近いかまたは基準値より高い値で推移すると予測しているが、予測期間後半の不確実性は 大きい。

以上のことから、昨年夏から発生していたラニーニャ現象は春のうちに終息し、夏は不確実性が大 きいものの平常の状態が続く可能性が高い。

西太平洋熱帯域の海面水温は、ラニーニャ現象の発生に伴って昨年夏から基準値より高い値が続い ている。今後次第に基準値に近づくと予測される。

インド洋熱帯域の海面水温は、12月から基準値より低い値で推移している。今後夏にかけて 次第に基準値に近づくと予測される。

3月の日本の天候では、東・西日本と沖縄・奄美の低温、東日本太平洋側、西日本と沖縄・奄美の 少雨、および東日本太平洋側と西日本の多照が西太平洋熱帯域高温時の傾向に一致していた。今後の 日本の天候については、最新の季節予報を参照されたい。

3月の世界の天候では、メキシコ北部付近の異常高温、インドシナ半島付近と中米から南米北部に かけての異常低温、および米国南部からメキシコにかけての異常少雨がラニーニャ現象時の特徴に一 致していた。


エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度

各監視指数の最近10年間の経過
(2001年1月〜2011年3月)
折線は月平均値、滑らかな太線は5か月移動平均値
赤:エルニーニョ現象 青:ラニーニャ現象 発生期間

気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。

2010年 2011年
エルニーニョ監視指数 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月
基準値との差(℃) +0.6 0.0 -0.7 -0.9 -1.0 -1.3 -1.6 -1.6 -1.5 -1.4 -0.8 -0.7
5か月移動平均(℃) +0.3 -0.1 -0.4 -0.8 -1.1 -1.3 -1.4 -1.5 -1.4 -1.2
南方振動指数 +1.5 +0.9 +0.5 +1.8 +1.9 +2.3 +1.8 +1.5 +3.0 +1.8 +1.9 +2.0
資料提供:気象庁
2月 4月