昨年夏から発生していたラニーニャ現象は終息したとみられる。
夏は平常の状態が続く可能性が高い。
2011年4月の海面水温(上)と平年偏差(下)
4月のエルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は-0.3℃、2月を中心とした5か月平均値 は-0.9℃だった。4月の南方振動指数は+2.2だった。4月の太平洋赤道域の海面水温は、 中部で負偏差、西部で正偏差だった。太平洋赤道域の海洋表層の水温は、ほぼ全域で正 偏差となり、西部に顕著な正偏差が見られた。これら海洋の状態は、ラニーニャ現象が ほぼ終息したことを示している。一方、太平洋赤道域の日付変更線付近では、大気下層の東風偏差が 持続し、対流活動は平年より不活発だった。
太平洋赤道域の西部では海洋表層の暖水の蓄積が顕著だが、日付変更線付近における大気下層の東 風偏差が持続すれば、この暖水の東進による海面水温の上昇は大きくないと考えられる。
エルニーニョ予測モデルは、エルニーニョ監視海域の海面水温が春は基準値に近い値で、その後基 準値に近いかまたは基準値より高い値で推移すると予測しているが、依然、予測期間後半の不確実性 は大きい。
以上のことから、昨年夏から発生していたラニーニャ現象は終息したとみられる。夏は平常の状態 が続く可能性が高いが、不確実性が大きく、エルニーニョ現象が発生する可能性もある。
西太平洋熱帯域の海面水温は、昨年夏から基準値より高い値が続いているが、ラニーニャ現象の終 息に伴い、今後次第に基準値に近づくと予測される。
インド洋熱帯域の海面水温は、12月から基準値より低い値で推移している。今後夏にかけて 次第に基準値に近づくと予測される。
4月の日本の天候では、東日本と沖縄・奄美の低温、東日本太平洋側と西日本の少雨・多照および 北日本の多雨が西太平洋熱帯域高温時の傾向と一致していた。今後の日本の天候については、最新の 季節予報を参照されたい。
4月の世界の天候では、インドシナ半島付近とオーストラリア北部の異常低温が西太平洋高温時の 特徴に一致していた。
エルニーニョ監視海域:北緯5度〜南緯5度、西経150度〜90度
各監視指数の最近10年間の経過
(2001年1月〜2011年4月)
気象庁では、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差の5か月移動平均値が
6か月以上続けて+0.5℃以上となった場合をエルニーニョ現象、
6か月以上続けて-0.5℃以下となった場合をラニーニャ現象としている。
2010年 | 2011年 | |||||||||||
エルニーニョ監視指数 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 |
基準値との差(℃) | 0.0 | -0.7 | -0.9 | -1.0 | -1.3 | -1.6 | -1.6 | -1.5 | -1.4 | -0.8 | -0.7 | -0.3 |
5か月移動平均(℃) | -0.1 | -0.4 | -0.8 | -1.1 | -1.3 | -1.4 | -1.5 | -1.4 | -1.2 | -0.9 | ||
南方振動指数 | +0.9 | +0.5 | +1.8 | +1.9 | +2.3 | +1.8 | +1.5 | +3.0 | +1.8 | +1.9 | +2.0 | +2.2 |