空に浮かんでいる雲は様々な姿を見せてくれます。まるで動物のようだったり、だれかさんに似ていたり、そうかと思えば、遠くで雷鳴が聞こえ、真っ黒な雲からは大粒の雨が降ってくる。雲の七変化は天気そのものであり、気象の言葉で言えば、大気の状態を映し出す鏡のようなもの。つまり、雲は天気のかおなのです。
これだけ多彩な雲ですから、たくさんの種類があると思いきや、実は雲の種類は10しかありません。
では、どのようにして雲の種類分けをしているかと言うと、おおまかに言えば雲のできる高さで分類しています。雲のできる高さごとに上から、上層雲、中層雲、下層雲の3つに分けられます。
よく現れる高さ雲のなまえ
上層雲のなかま5~13km巻雲巻積雲巻層雲 
中層雲のなかま2~7km高積雲高層雲乱層雲 
下層雲のなかま~2km層積雲層雲積雲積乱雲
雲の種類はこれら10種類となり、「十種雲形」と呼ばれています。
ちなみに、十種雲形では「層」と「積」という字が多く使われています。「層」という字が付く雲は、一般に雲の輪郭がはっきりせず、空をベールのように覆う雲です。一方、「積」という字が付く雲は、一般に雲の輪郭がはっきりしていて、モクモクという言葉がぴったりな見た目も雲らしい雲です。
  • 巻雲
  • 巻積雲
  • 巻層雲
巻雲
巻雲
 巻雲

撮影日の天気図

2004年6月2日、東京都港区)

名前:巻雲(けんうん)

英名:Cirrus

最も高いところにできる雲で、 季節によっても違いますが、夏などは上空13キロくらいに達します。ちょうど、長距離の飛行機が飛ぶ高さに出現する雲と言えるでしょう。

 

空高いところは真夏でも極寒の世界ですから、巻雲は小さな氷の粒でできた雲です。だから、姿は刷毛ではいたような雲と形容されるように、繊維状や羽毛状で、上空の強い風により端がカールしたようにも見えます。

 

天気図の解説

この雲が撮影されたときの天気図をみてみると、日本列島は高気圧に広く覆われています。でも、東京からみると、高気圧の中心が北にかたよっていて、巻雲が現れやすい天気図だったと言えるでしょう。また、関東の上空を強い風が流れていたことも分かります。


巻積雲
巻積雲
 巻積雲

撮影日の天気図

2002年10月7日、東京都港区)

名前:巻積雲(けんせきうん)

英名:Cirrocumulus

この雲も巻雲と同じく空高いところにできる雲ですが、巻雲と大きく違うのは小さな白い雲が群れをなして見えることです。その姿はうろこ状やさざ波のように見え、秋の空を彩る代表的な雲として知られています。

 

うろこ雲、さば雲、いわし雲は巻積雲のニックネームです。また、巻積雲は低気圧が西から近づいてくると見られる雲で、天気が崩れてくる兆候でもあります。

 

天気図の解説

ちょうどこの雲が撮影された日、東京では朝9時ごろまで、強い雨が降っていました。でも、寒冷前線が通ったあとは、澄んだ秋の青空にうろこ雲が広がりました。巻積雲は低気圧や前線に伴って現れる雲なので、天気の変化がいち早く分かるんですね。


巻層雲
巻層雲
 巻層雲

撮影日の天気図

2004年6月3日、東京都港区)

名前:巻層雲(けんそううん)

英名:Cirrostratus

巻層雲も上層雲のなかまですが、雲の輪郭が分からない、薄いベールのような雲です。太陽の光をわずかに遮る程度のうす雲です。

巻層雲が空一面を覆うと、太陽のまわりに白いリングができることがあります。これは「日の暈(かさ)」または「ハロ」と呼ばれるもので、太陽の光が氷の結晶に反射して生じる光の輪です。

同じような光の現象は月でも起こり、「月の暈(かさ)」と呼ばれます。

 

天気図の解説

この雲が撮影された日は、「巻雲」が撮影された翌日です。高気圧は東北地方にあって、東京は高気圧の縁にあたっています。雲は前日と比べて少し厚みを増して、空全体を覆いました。「日の暈(かさ)」は太陽の高さが高い日中によく見られるものなので、巻層雲が見られたら、「日暈」も探してみてはいかがでしょうか。


  • 高積雲
  • 高層雲
  • 乱層雲
高積雲
高積雲
 高積雲

撮影日の天気図

2004年11月24日、東京都港区)

名前:高積雲(こうせきうん)

英名:Altocumulus

中層に現れる雲は様々な形を持っています。高積雲はちょうど上空5キロ付近にできる雲で、白または少し灰色の小さな雲がかたまりとなって見えます。

また、雲の輪郭がはっきりしていることも特徴のひとつです。その姿からレンズ雲、ひつじ雲、波状雲などと呼ばれることもあります。

高積雲が空一面に広がってくると、いよいよ天気は下り坂に向かいます。ただ、高積雲だけでは雨は降ってきません。

 

天気図の解説

この雲が見られた日は秋も深まった11月下旬。日本列島は緩やかに高気圧に覆われました。でも、中国大陸には冬の冷たい空気があって、4日後には秋田で初雪が降りました。高積雲は空が澄んだ秋によく見られ、天気の変わり目を知らせてくれます。


高層雲
高層雲
 高層雲

撮影日の天気図

2007年5月26日、神奈川県藤沢市鵠沼)

名前:高層雲(こうそううん)

英名:Altostratus

高層雲は巻層雲と似ていますが、高層雲の方が雲に厚みがあり、空を覆うベールも濃く見えます。空全体は灰色で、太陽はすりガラスを通したようにぼんやりと見えます。また、夜ならば、月がかすんで見えます。だれもが知っている文部省唱歌「おぼろ月夜」のおぼろは高層雲なんですね。

 

おぼろ月夜は天気が崩れる兆しでもあります。ちなみに、高層雲では「日の暈」や「月の暈」はできません。

 

天気図の解説

この雲が撮影された日の天気図をみると、日本列島には低気圧が2つあります。三陸沖にある低気圧は前日に雨を降らせたもの。26日は天気が回復して青空が期待できたはずなのですが・・・当日はこのように太陽に濃いベールがかかりました。

天気の回復を遅らせた犯人は、もうひとつの北海道の西にある低気圧だったのです。関東からみて、低気圧が西側に残っている場合は、乾いた空気が入りにくく、天気の回復が遅れることがあります。


乱層雲
乱層雲
 乱層雲

撮影日の天気図

2006年6月11日、埼玉県さいたま市)

名前:乱層雲(らんそううん)

英名:Nimbostratus

乱層雲は雲がとても厚いため、暗い灰色の雲、または黒い雲に見えます。また、空全体をすき間なく覆い太陽は全く見えません。

乱層雲は別名「雨降らし雲」と呼ばれるように、雨や雪が絶え間なく降ることが多いです。広い意味で雨雲と言えるでしょう。

 

ちなみに、乱層雲の「乱」は雲が不規則に乱れているという意味で、空が暗くなり、雨かしらと見上げたときに見える雲がまさに乱層雲なのです。

 

天気図の解説

この雲が撮影された日は一日中、雨が降ったりやんだりのすっきりしない天気でした。雨を降らせる乱層雲は、たっぷりと雨粒を含んでいるために、このように太陽の光をさえぎって黒っぽく見えるんですね。


  • 層積雲
  • 層雲
  • 積雲
  • 積乱雲
層積雲
層積雲
 層積雲

撮影日の天気図

2006年11月12日、神奈川県藤沢市辻堂海岸)

名前:層積雲(そうせきうん)

英名:Stratocumulus

層積雲は雲の輪郭が比較的はっきりしていて、まだら状やロール状になって空を覆います。層積雲の雲色はだいたい白ですが、雲の厚みが500〜1000メートルくらいあるため少し灰色っぽく見えます。層積雲が広がってくると太陽はすっかり隠れてしまいます。なんとなく、空模様が怪しいなと感じさせる雲です。

 

層積雲は季節を問わず見られますが、春や秋の周期的変化のときは天気の崩れとよくリンクしています。

 

天気図の解説

この雲が撮影された11月12日は関東地方で木枯らし1号が吹きました。この冬初めて現れた冬型の気圧配置です。札幌や青森のほか長野県内でも初雪が降りました。初冬の11月は海がまだ暖かいため、上空の寒気との気温差が大きくなって、このような層積雲が発生するのです。


層雲
層雲
 

撮影日の天気図

2007年6月9日、石川県金沢市)

名前:層雲(そううん)

英名:Stratus

霧状の雲で、地上に最も近いところにできる雲です。空気が非常に湿っている場合は雲の底がとても低く、高層ビルや煙突などを隠してしまいます。

一方、高い山から見下ろせば「雲海」として見え、層雲が地面に接したものが「」となります。

 

層雲は一年を通して見られますが、特に梅雨時は現れやすいです。しかし、層雲では大雨になることはなく、降っても弱い雨または霧雨です。

 

天気図の解説

この雲が撮影されたのは2007年6月9日の金沢市です。いつもの年ならば北陸地方が梅雨入りしている頃ですが、この年は梅雨前線の北上が遅く、梅雨入りが2週間くらい遅くなりました。この日の天気図では高気圧の中心が朝鮮半島の北と日本の東にあって、ちょうど金沢あたりは高気圧のあいだに入っています。高気圧のあいだを気圧の谷と呼びますが、金沢では朝のうちまで雨が降っていて、雨あがりに層雲が見られました。

稲の濃い緑と低くたなびく層雲が、雨の季節の訪れを告げているようですね。


積雲
積雲
 積雲

撮影日の天気図

2004年7月28日、東京都港区)

名前:積雲(せきうん)

英名:Cumulus

雲と言えばだれもが思い描く雲の姿です。夏の絵日記には必ず登場する雲ですね。青く澄んだ空にぽっかりと浮かんだ雲が積雲で、モクモクと雲の輪郭がはっきりしています。暖かい季節の代表的な雲と言えるでしょう。

 

積雲は一般に雲に厚みがありドーム状のため、太陽の光があたっている部分はより白く、陰の部分は灰色に見えるなど、太陽の当たり方で雲の濃淡が変わって見えます。

 

天気図の解説

この雲が撮影された日はちょうど関東地方に台風が近づいていました。幸い、台風の直撃はまぬがれましたが、空には見事な積雲が見られました。積雲は暖かく湿った空気が上昇することでできるので、夏には毎日のように見られることがあります。


積乱雲
積乱雲
 積乱雲

撮影日の天気図

2005年8月20日、静岡県静岡市)

名前:積乱雲(せきらんうん)

英名:Cumulonimbus

夏の入道雲または雄大積雲がさらに発達したものが積乱雲です。だれもが一度は見たことがある夏の代表的な雲です。その姿はモクモクと空へ大きく伸び上がり、まるで巨大なカリフラワーのようにも見えます。

積乱雲が最大級に発達すると高さが14キロにも達し、そこからは横に向かって雲がたなびきます。この形がカナトコに似ていることから「カナトコ雲」とも呼ばれます。

 

積乱雲の下では激しい雨や雷雨があり、ときに突風や竜巻などの激しい現象を伴うことも少なくありません。

 

天気図の解説

この雲が撮影された日、静岡では朝から雷雨となるなど、晴れたり雨が降ったりと天気がめまぐるしく変わりました。当日の天気図には将来秋雨前線となるものが北海道を横切っていますが、全国的にみても変わりやすい天気となり、山間部ではこのような積乱雲があちらこちらで見られました。